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  • 幸福の薬(アヴポル 3部後 アヴドゥル生存ルート)

    category:JOJO二次創作小説

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こんにちは。

今回はアヴドゥル×ポルナレフです。実はかなり前に一度投稿した(ものすごい初期の頃に書きました)作品なのですが、大幅に加筆修正を行い、三つに分けていたものを一つにまとめました。元は「病は気から」というタイトルのものです~。生存ルートを辿ったアヴドゥルとポルナレフが3部後フランスで一緒に暮らしている設定です。幸せないちゃいちゃアヴポル目指しました。

最近スランプなのでリハビリに過去の作品を少しずつ手直ししようと作戦です。ずっとこの作品は書き直したいと思っていたので、今回ちょっと手をつけてみました。
リクエストの短編もぼちぼち書いておりますので、今しばらくお待ち下さい・・・。

↓いつも通り本編は追記に格納!

道沿いのどの家にも灯りがついている。
もうすっかりと暮れてしまった景色の中に浮かぶ自分の家の灯りを目指して、ポルナレフは無心に歩いていた。早く家に帰りたい。今日はそんなに忙しかった訳でもないが、身体はもうクタクタだ。
珍しく財団から仕事の依頼が入ったのは、一週間ほど前の話だったか。仕事の内容からいえばどちらが出向いても構わなかったのだが、すでに仕事の予定を入れていたアヴドゥルの代わりに、ポルナレフは数日に渡ってスタンド使いの調査へ駆り出されていた。

玄関の前に広がる小さな庭へ続く門をくぐると、一気に身体の力が抜ける。門から玄関への数歩が遠い。外に漏れ出している夕食の匂いを嗅ぎながら、ポルナレフはドアを押し開けた。
アヴドゥルが夕食を作っているのだろう。キッチンから物音がしているが、迎えの挨拶はなかった。料理から手が離せないのかもしれない。それにしたって、声を掛けるぐらいしてくれたらいいのに。アヴドゥルは自分が帰ったことに気づいていないのだろうか?
自分から恋人に挨拶をしに行く気力すら湧かず、ポルナレフはリビングに入るなり、荷物を放り出してソファーへ倒れ込んだ。小声で呟かれた「ただいま」の挨拶はソファーの上のクッションに吸い込まれる。

・・・なんとなく身体がだるい。ここ最近、ずっと疲れが取れない気がする。熱もなく、はっきりとどこかが痛むわけでもないから、日々の雑事をさぼる理由にはならないし、仕事を休むわけにもいかない。理解してもらえない不調がポルナレフの気力を毎日確実に削り取っていく。
ようやく恋人の帰宅に気づいたのだろうか。アヴドゥルがキッチンからこちらへ来る足音を聞いて、怒られると分かっているのにポルナレフは起き上がることができなかった。自分の恋人は、いついかなるときも、だらしない振る舞いを嫌うのだ。たとえば、今のように帰って来るなり着替えもせずソファーでごろごろしたり、荷物を床に放り出したままにしたりするような。

「ポルナレフ!」
「あー・・・ただいま」
「だらける前にすることがあるだろう。着替え位したらどうだ」

鞄も置きっぱなしじゃないか。
案の定、小言を頂戴したが、それでも起き上がる気がしない。このぐらいは想定の範囲内だ。それより体が鉛のように重い。ポルナレフはこのまま自分の身体がどこまでもソファーに沈んでいくような気がした。

「・・・ポルナレフ、」
「うん・・・」
「ポルナレフ、聞いているのか?」
「聞いてる・・・」
「いい加減にしないか」

優しく言うのはいつも2回目までだ。アヴドゥルは諭す声に混ざる苛立ちを隠そうともしない。一回りも年上の恋人は、一見何事にも寛容で冷静な大人を気取っているが、実は本人も自覚しているほど気の短いところがある。仕方なく、ポルナレフはソファーに俯せたまま、左腕を伸ばして手探りで床の鞄を掴んだ。そのままそれをソファーまで引きずって手繰り寄せると、頭の上でアヴドゥルが呆れたような溜息を吐く。

「器用な奴だな・・・そんなに動きたくないのか」

ポルナレフは言い返す気力もなく、ソファーの上のクッションに額をすりつけた。アヴドゥルにも自分の不調のことは話していない。言ったところで、単なる怠け癖だと呆れられるか、気が抜けているからだと説教を喰らうかだろうことは、容易に想像がついた。
―――自分が何も言わなくてもそっと気づいて、いたわってくれるような人を選べば良かった。こんなときに小言や説教ばかりで、おかえりのキスもしてくれないような恋人なんて、一体どこが良かったのか自分でも分からない。
アヴドゥルに対して随分失礼なことを考えながらぐずぐずとソファーに転がっていると、ポルナレフは急に顔を両手で挟み込まれてしまった。何事かと目を瞬かせていると首だけアヴドゥルの方へ向かされて、首の筋が攣りそうになる。

「いてててててッ・・・・・・!」
「熱はないが・・・」

無理な方向へ曲げられた首を押さえながら、ポルナレフは緩慢な動きでソファーに起き上がった。ポルナレフの顔を離したアヴドゥルが思案顔でその隣に腰掛ける。

「風邪でも引いたか?」
「それはねえ・・・と思う」

ポルナレフは首を振った。頭から血が一気に下がったのか、少しばかり視界がくらくらする。
・・・そしてとにかく、身体がだるい。

「『それは』?じゃあ具合が悪いのは本当なのか」
「多分」
「多分とはなんだ。自分の身体のことだろうに」
「具合が悪いっていうか・・・なんか、だるいんだよ」

何時間寝ても身体が重いし、朝起きたらいきなり疲れてる。動くのだって億劫だし、横になっていてもちっとも楽じゃない。

「それは病気だな」
「病気?」
「病気だろう。元気じゃあないんだから」

なるほど単純明快な答えである。ポルナレフは合点がいったように頷いた。元気でないのなら、それは確かにどこかが悪いに違いない。心の不調であるにしろ、身体の不調であるにしろ、おそらくケガをしているか病気であるかのどちらかである。
一度自分が病人であると認めると、ポルナレフは急激に体調が悪化したように感じた。『病は気から』とは、よく言ったものだ。ポルナレフはまたソファーに倒れ込んで、クッションに顔を埋める。

「そっか。じゃあ俺、病気かも」
「ああ」

アヴドゥルは少し何か考えるように、寝転んだポルナレフの髪の後れ毛を指で梳いていたが、やがて何かを思いついたように立ち上がった。

「病人は病人らしく振る舞うことだ。いいな」
「はあ?何だよ、いきなり」
「安心しろ。私もお前にそれ相応の扱いをする」

訳が分からずポルナレフは首を傾げるが、アヴドゥルは一向に構う様子もなく部屋を出て行った。部屋に残されたポルナレフは、先程のアヴドゥルの言葉にますます頭を悩ませる。
それからしばらくの間、一人あれこれと考えを巡らせながら寝転んでいたポルナレフだったが、アヴドゥルが戻って来る前にようやく思い切ってソファーから起き上がった。きょろきょろと辺りを見回したものの、部屋の中はしんとしている。先程アヴドゥルがいないくなってから、もう十分は過ぎているだろう。アヴドゥルはキッチンに戻ったのだろうか?料理をする音は聞こえないが、そろそろ本当に荷物を片付けて着替えた方が良いかもしれない。
ポルナレフが鞄を掴んで自分の部屋へ行こうと立ち上った時、ちょうど部屋のドアが開いた。戻ってきたアヴドゥルはポルナレフの寝巻きとタオルを持っている。

「アヴドゥル、おまえどこ行ってたんだ?」
「準備をしていた」
「準備?」
「いいから、風呂に入るぞ」
「風呂?なんで?飯は?」

アブドゥルは混乱して固まったポルナレフの腕をつかんで、さっさと風呂場へ歩いて行く。訳が分からぬまま、ポルナレフは服を脱がされて浴室に押し込まれた。ドアも開けたままで突っ立っていると、下着だけになったアヴドゥルも浴室に入ってくる。狭い浴室で体格の良い男が二人。殆ど身動きもできない。

「お、おい・・・待てよ、お前も入んのか!?」
「洗ってやる」
「いい!いいって!出ろよ!」
「病人なんだろう?遠慮するな。大人しくしていろ」

一緒に風呂に入ることなんて別段珍しくはないが、アヴドゥルが下着をつけているのに自分だけ真っ裸に剥かれているのはなんだか妙な感じだ。ポルナレフは「そういうこと」をするわけでもないのに、一緒に風呂に入って裸を見られていることが急に恥ずかしくなってきた。なるべく身体を丸め、アヴドゥルの目から自分の身体を隠すように背を向ける。アヴドゥルはポルナレフの気など知らぬ顔で、シャワーのコックを捻った。たちまち湯気が狭い空間に広がって、少し息苦しい。

「熱かったら言え」

冷えた背中に湯を掛けられ、ポルナレフは一瞬鳥肌を立てた。後ろから抱え込まれるようにして床に座らされる。あれよあれよという間に、アヴドゥルは湯を掛けてポルナレフのセットされた髪を下ろし、シャンプーを泡立てていた。本気で風呂の介助をするつもりのようだ。下着も身に着けているし、他意はないだろう。もう抵抗したところで仕方あるまい。
ポルナレフは浴室の鏡越しにアヴドゥルの顔を眺めた。鏡の中で熱心にうなじの辺りや耳の後ろを洗っているアヴドゥルの目は真剣だが、あの戦いの日々よりはずっと穏やかな顔をしている。頭に触れる指も普段より優しくて、くすぐったいが気持ちいい。ポルナレフの意識がぼんやりしてきたところで、アヴドゥルはシャンプーを終えた。流すぞ、と声を掛けられ、返事をする間もなくシャワーが頭の後ろに浴びせられる。

「熱いか?」
「ちょうどいい」
「そうか。目は閉じていろよ」

アヴドゥルはポルナレフの耳に湯が入らないよう、注意深く泡を流しているようだった。顔の前に湯や泡が垂れて来ないように、額にも手を添えられる感触がする。アヴドゥルの太い指を思い出して、存外器用だな、とポルナレフは感心した。
素直に目を閉じたため、ポルナレフにはアヴドゥルの表情や手の動きが分からない。ふいに耳やうなじに手が触れる度、首をすくめてしまう。

「流しにくいだろう じっとしていろ」
「くすぐってえんだよ」

アヴドゥルは何も言わずに耳を濡れた指で拭った。指はそのまま肩を這い、背骨に沿って背中を下りていく。ポルナレフは目をきつく閉じたまま背を反らせて、その指から逃れようとした。抗議しようと口を開いた途端、腰の辺りにある窪みを撫でられて、思わず裏返ったような情けない声で悲鳴を上げてしまう。

「アヴドゥル!」
「なんだ?」
「なんだじゃねえよ・・・何してんだ!」
「泡がついていた」

アヴドゥルの声が笑っている気がして、ポルナレフは目がしみるのも構わず、思い切って目を開けた。鏡の中のアヴドゥルと目が合う。アヴドゥルの口元が、悪いことを考えているときのように片端だけが歪められていた。睨みつけても、アヴドゥルは涼しい顔で泡を流し終え、身体を洗うスポンジに手を伸ばす。

「・・・まだ続ける気か?」
「当たり前だろう」

だったら、さっき泡が身体についてたって気にしなくても良かったじゃねえか!
ポルナレフの主張に、アヴドゥルは肩をすくめただけで、石鹸をつけたスポンジを泡立て続けている。

「病人は大人しくしていろ。悪いようにはしないさ」
「とても病人にいう台詞とは思えないぜ」

アヴドゥルはたっぷりと泡のついたスポンジをポルナレフの背中に滑らせた。次は首筋、肩、腰と順々に泡で覆われていく。身体の後ろ側を大方洗い終えると、アヴドゥルはポルナレフの前へ回って、足の間にしゃがんだ。この位置だと、どうしても隠したいところがアヴドゥルの目の前に曝け出されてしまう。ポルナレフはどうにも気恥ずかしくなって、そわそわと足を動かした。

「じっとしていろと言っただろう」

濡れた太股がアヴドゥルの腕に当たり、アヴドゥルは咎めるようにポルナレフを見上げてきた。それでもスポンジを握る手を止めようとはしない。腹を辿って敏感なところへスポンジが触れたときはポルナレフも思わず身体を強張らせたが、アヴドゥルはあくまでも事務的に手を動かしただけだった。スポンジはポルナレフの足の付け根から太股の内側をなぞり、膝の裏を念入りに磨き上げていく。
先ほど見せた顔は何だったのかと思うほど、アヴドゥルはごく真面目に身体を洗っていた。ポルナレフはその様子を見て身体の力を抜いたが、どこか物足りない気もして、そんな自分のあさましい期待を慌てて打ち消す。

「どうした」
「い、いや・・・なんでもない」

ポルナレフは気づかれたかと一瞬焦ったが、アヴドゥルはそうか、と言ったきり、あまり気にする様子もなく作業を再開した。泡を纏ったスポンジがふくらはぎをたどって足の甲を擦る。足の裏まで洗って、まだ掴んだ足首を離そうとしないアヴドゥルにポルナレフは首を傾げる。

「何してんだよ。もう終わっただろ?」
「まだだ」

アヴドゥルは足の指の間にスポンジを入れて、指を一本ずつ丁寧に泡を塗りつけていった。ぞくぞくとしたものが背中を上ってきて、ポルナレフは思わず身震いする。スポンジが指の間の薄い皮膚を撫でる度、足が攣りそうなほど変に力が入った。

「なあ、アヴドゥル!もういい!いいから・・・!」
「だめだ。まだこっちの足も残ってるだろう?」

じっとしていろ、と言うなり、アヴドゥルがもう片方の足首を掴んだ。身を捩って逃げ出そうとしても、アヴドゥルはそれを許さない。顔を引き攣らせるポルナレフとは対照的に、アヴドゥルは鼻歌交じりで足の指に泡を塗りこめていく。鳥肌が立ちそうな感触の中に、妙な快感が混ざって、足の甲が反り返った。ぬるぬるした指同士が擦れ合い、絡んだ泡はますます細かくなる。洗い終わるまで、アヴドゥルは落ち着きなく動くポルナレフの足を興味深げに眺めていた。

洗い終わると湯で泡を流し、アヴドゥルは先に浴室の外へ出て行った。しばらくその場で待っていると、タオルを持って戻ってきたアヴドゥルがポルナレフの頭から順に身体を拭いていく。脱衣所に出たポルナレフが風呂場の籠に入れていた下着をつけて寝巻きのボタンを留める間も、アヴドゥルは後ろから髪を拭いてくれた。

「もういいか?」
「ん」

粗方水気を拭ったところで、アヴドゥルの指が梳くように髪を整える。されるがままになりながら、ポルナレフは自分がまだ小さかった頃のことをぼんやりと思い出していた。幼い頃、ポルナレフはシャンプーが嫌いだったが、風呂上りに髪を拭いてもらうのは好きだった。アヴドゥルの手は母親のものとは比べ物にならないほど大きいが、同じくらい優しい。
アヴドゥルは自分も服を着ると、今度はポルナレフをリビングのソファーに座らせた。ポルナレフは置いてあったクッションを抱きしめて、大人しくソファーの上に蹲る。アヴドゥルはドライヤーを持ってその隣に座った。

「今日はほんとになんでもしてくれるのな」
「まあな・・・治るまでだぞ」

ケチ、と言うと、アヴドゥルが軽くポルナレフの髪を引く。

「そういや、夕飯は?」
「もう作った。髪を乾かしたら準備しよう」
「メルシー」

ポルナレフはクッションに顔を埋めたまま目を閉じて、吹き付ける温かい風の合間に、アヴドゥルの指が自分の髪を梳くのを感じていた。眠いわけではないが、なんとなく頭がぼんやりする。

「これ、いつもしてくれたらいいのに」
「それはできない相談だな」

言葉こそ冷たいが、アヴドゥルの手つきは柔らかいままだ。声も穏やかに凪いでいる。

「アヴドゥルがこういうの上手いって知らなかった」
「こう見えて他人の世話には慣れてるんでな。昔から兄弟以外でも、近所の子供の面倒を見させられたものだ」

そういう土地で育ったからな。
ポルナレフはそれを聞いて、幼い頃のアヴドゥルがもっと小さな子供をあやしているところを想像した。随分しっくりくる光景だ。

「お前も面倒見は良い方だろう」
「そうか?」

アヴドゥルの言葉にポルナレフは首を捻る。確かに自分は兄だが、妹以外に対して面倒見が良いと言えるだろうか?他人からそう言われたことなければ、目の前の男ほどお節介なところがあるような人間でもない。それ以前に、世話を焼かせっぱなしのアヴドゥルからそんなことを言われること自体が奇妙に思えた。

「旅の間も花京院や承太郎とよくつるんでいたじゃあないか」
「まあそうだけどよ・・・」

年齢が近いこともあって若者二人とは確かによくつるんでいたが、ポルナレフから見ても、不本意ながら落ち着き具合はどちらかと言えば花京院や承太郎の方が上のように思えた。

「日本に帰るとき、二人ともお前に世話になったと言っていたぞ」

社交辞令だろ、とポルナレフが返すと、アヴドゥルは首を振る。
何かと落ち込みがちな雰囲気を明るくしてくれたことや、異国の地で旅慣れたポルナレフに助けられたこと。旅の間車の運転をしてくれたことや、度々気晴らしに連れ出してくれたこと。本当に感謝している、と二人はアヴドゥルに言い残して、日本行きの飛行機に乗り込んでいったらしい。

「知らなかった・・・つーか、なんで俺じゃなくてアヴドゥルに言ったんだ?」
「さあな。まあ、本人にこういうことを面と向かって言うのは照れ臭かったんだろう」

アヴドゥルは唇を尖らせたポルナレフの髪を手櫛で撫でつける。

「いつか二人ともフランスに来たらいいのに。フランスなら俺も案内できるし・・・家に泊めてやったら、ホテル代浮くだろうし」
「そうだな」
「あと俺も日本に行ってみたい」
「一人で行くのか?」
「まさか!行くだろ?」
「ああ。お前が迷惑を掛けないように見張っている人間が必要だからな」

ポルナレフがアヴドゥルを肘で小突くと、アヴドゥルは声を上げて笑った。
いつにしようか。二人とも学生だから、次の夏?
ポルナレフはクッションから顔を上げて壁のカレンダーを眺めた。明日は二人に手紙を書こう。アヴドゥルが仕事を入れてしまう前に、早めに予定を立てなければいけない。どうしてこんな楽しいことを、すぐに思いつかなかったのだろうか。ポルナレフは急に浮足立った気持ちを抑えきれず、ソファーに乗せた足をもぞもぞと擦り合わせる。

「よし、もういいだろう」

食事にしよう。
アヴドゥルは乾き残しがないことを確認すると、ドライヤーのスイッチを切ってコンセントを抜いた。ポルナレフは立ち上がったアヴドゥルの後ろについてキッチンへ行こうとしたが、アヴドゥルは座っていろと言って聞かなかった。

「別に平気だって。熱があるとかじゃねえし・・・なんかよくなってきた気がする」
「だめだ。普通病人にそんなことさせないだろう?先にテーブルへ行って座っていろ。すぐにできる」

頑固な恋人は言い出したらてこでも動かない。ポルナレフは仕方なく自分の席へ腰を下ろすと、アヴドゥルが目の前で忙しなく動き回って夕食の皿を並べていくのを、落ち着かない気持ちで眺めた。
夕食の準備が終わると、アヴドゥルは何時ものようにポルナレフの向かいに座った。互いにワインを注ぎ合って食事を始める。ポルナレフは今日の夕方まであまり食欲がなかったが、今は大分気分が良くなっていた上に、シャワーも済ませた後なので空腹だった。メインディッシュのソテーにいきなり手をつけ、パンと交互に口へ詰め込んでいく。

「ポルナレフ、食事は逃げたりしない 落ち着いて食え」

うんうん、と首だけで頷いてワインで流し込むと、アヴドゥルは苦笑いしてワインのお代わりをグラスへ注いでくれた。ポルナレフはまたソテーを頬張ろうとしたが、ふと思い当たったことが気になって手を止める。持ち上げかけていたフォークを下ろし顔を上げると、目の前のアヴドゥルはのんびりとスープを啜っていた。

「なあ、アヴドゥル」
「うん?」
「日本ってどんなとこなんだ?どこ行くのがいいとか、俺全然知らないんだけど」
「どこに行ってもなかなか楽しめるぞ。まあ、承太郎たちの都合も聞かないと分からんだろう」
「仕事は?」
「私の仕事はどうにでもなる。向こうに居る間、客に会うかもしれんが」

アヴドゥルは世界中に顧客がいる。
占い師としては成功した部類らしく、その手の界隈ではかなり名が知れているそうだ。一応エジプトに店を出してはいたが、アヴドゥル自身はそれほど長く店に居なかったと聞く。各国から依頼を出してくる客たちの要望で、実際にその国へ訪れることが多く、世界中を飛び回るようにして仕事をしていたのだそうだ。懇意の客から新しい客を紹介される形で順調に商売相手を増やしたアヴドゥルは、どの国に行っても大抵は仕事をすることが出来るほどになった。

「日本にもいるんだな」
「大都市には山ほどいるぞ。日本に限らずな」

都市には大会社の社長や著名人、政府の要人が多く、そういう立場の人間は色々な方面へコネクションを持っている。そのつてで新たな客が芋づる式に増えていくのだと、以前アヴドゥルはポルナレフに語ったことがあった。
ジョセフもその一人で、ニューヨークにいる客の多くはジョセフに紹介されて知り合ったという。ただ、アヴドゥルは客の個人的な話や仕事の内容について、一切教えてくれることはなかった。ポルナレフはアヴドゥルがどれほどの収入を得ているのかすら知らないのだ。

「俺たちって、ずっと一緒にいるってことは結婚してるのとおんなじようなもんだろ?」
「まあ、そういうことになるかもしれんな」
「俺、アヴドゥルの給料知らないんだけど」
「給料?」

ワインに手を伸ばしていたアヴドゥルが片方の眉を上げる。

「私が仕事でいくら貰っているか、お前に関係があるのか?」

ポルナレフはアヴドゥルの言葉に口を噤んで、付け合せのグラッセをフォークでつつきまわした。
関係があるかと言われれば、ないかもしれない。でも例えばの話だが、夫婦で互いにいくら稼ぐのかも知らないで結婚して生活を続けるなんて、できるんだろうか。家計が分からない状態では大きな買い物も難しいし、ローンだって見通しが立たなければ組めないだろう。アヴドゥルが大丈夫というなら信じるしかないが、大まかなことも知らないのではポルナレフとしても少々不安になる。

「安心しろ。こう見えて、お前の一人や二人養えるほどには貰っている。若い時の蓄えもあるしな」
「そんなに貰ってるのか?」
「詳しくは言えないが、一人上客を見れば一ヶ月は余裕で暮らせる」

それにそういう客は、仕事に行った時の待遇も良い。
ポルナレフはぽかんと口を開けてアヴドゥルを見た。たしかにアヴドゥルの客はジョセフのような羽振りの良い人間が多いことは知っていた。が、まさかそこまでとは・・・。

「・・・俺も占い師になろうかなあ」
「馬鹿なことを言うな。誰にでも出来る事じゃあない」
「じゃあ仕事について行くのは?俺って、立場的には奥さんと同じようなもんだろ。良いホテルとか、泊まってみたい!」
「無理に決まってるだろう」

じゃあアヴドゥルのマネージャーってことにして、と言うと、アヴドゥルは何も言わずに呆れた顔でパンをちぎっている。貰っている給料がすなわちその人間の能力を表している訳ではない、ということはポルナレフも勿論分かっていたが、今の話を聞かされて、ポルナレフは目の前の恋人のことを見直さざるをえなかった。

食事が終わった後は、アヴドゥルがまた食器を一人で下げて洗い物をした。その間、ポルナレフはアヴドゥルの言いつけどおり、湯冷めしないようにと渡されたブランケットにくるまってソファーでテレビを見る。
ポルナレフがうとうととまどろみ始めた頃、洗い物を終えたアヴドゥルが一度ポルナレフの様子を見に来たが、自分もシャワーを浴びてくると言って部屋を出て行ってしまった。

「先にベッドに行っているか?」
「いい・・・ここで待ってるから、早くしろよ」
「そうか、わかった。すぐ戻る」

その後もポルナレフは適当にチャンネルを回してテレビを眺めていたが、別段気になる番組も無かったので、やがて本格的に眠気に襲われてうつらうつらと舟を漕ぎ始める。テレビを消して、そのまま眠る直前の心地よい気だるさに身を任せていると、不意にドアの開く音がした。

「ポルナレフ」

自分を呼ぶ声がしていることは分かっているが、それでも返事をすることさえ億劫で、ポルナレフは目を閉じたまま聞こえないふりをする。近づいて来るアヴドゥルはポルナレフが寝入っていると思ったのか、それ以上は声を掛けてこない。ただ足音を立てないように、静かにこちらへ歩いてきていることが気配で分かった。

「寝ているのか?」

ソファーが軋んで、ポルナレフは自分のすぐ隣に体温を感じた。ソファーが沈み込んだせいで、身体が少しだけ温かい方へ傾く。囁くような声に耳元がむずむずしたが、ポルナレフは目を開かなかった。

「ポルナレフ」

不意に温かい指が唇を掠めた。
指は触れるか触れないかのじれったさで頬を辿り、こめかみ辺りの生え際から髪に差し入れられる。そのまま毛先まで撫でるように梳られたかと思うと、今度は額に垂れた前髪を優しく掻き上げられた。あまりのくすぐったさに耐えかねて、観念したポルナレフは渋々と目を開く。急に視界が明るくなって、目の奥が痛んだ。

「起きてるじゃないか」
「起こされたんだよ」

ポルナレフはむずむずと熱を持った頬の辺りを擦った。シャワーを浴びたばかりなのか、目の前のアヴドゥルは髪を下ろして、身体の飾りもすべて取り去っている。寝巻きだけはいつものような、ゆったりとした服だ。初めの頃は違和感があったが、最近はもう見慣れた姿だった。

「こんなところで寝ると風邪を引くぞ」

アヴドゥルはいつの間にかずり落ちていたブランケットをポルナレフの肩に掛けなおした。

「眠いならベッドに行けと言ったのに」
「アヴドゥルが寝る時、一緒に寝る。何のために待ってたと思ってんだよ」

折角ここまで待ったのに、今から一人で寝てしまっては意味がない。ポルナレフはしょぼしょぼする目を懸命に瞬かせた。頭を振って、脳みそを揺り起こす。アヴドゥルはそんなポルナレフの様子を見て、もう少しの辛抱だ、と言うとドライヤーを取り出した。
それから五分程、アヴドゥルはポルナレフの隣で髪を乾かしていたが、まだ完全に乾かないうちにドライヤーのコンセントを抜いてしまった。出掛けていたあくびを飲み込んで、ポルナレフはアヴドゥルの髪を一房摘まんでみる。最初より水気が飛んだものの、黒い髪はまだしっとりと湿っていた。

「もう終わりか?」
「これぐらいなら大丈夫だろう」
「アヴドゥルこそ、風邪引いても知らねえぞ」
「私はそんなヘマはしない」

それに、私と一緒に寝てくれるんだろう?
アヴドゥルは意地悪そうな顔で笑いながら、ポルナレフの腕を掴んで立ち上がった。
寝室は暖房など入れていない。大きなベッドに先に潜り込んだものの、朝取り替えたシーツがあまりにも冷たくて、ポルナレフは思わず身体を丸めた。

「アヴドゥル、電気消せよ」
「分かってる」

電気が消えて急に暗くなった視界に目はついて行けず、少しの間何も見えない闇が広がる。アヴドゥルも同じなのか、手さぐりで自分の枕を探しているようだ。伸ばされた手がポルナレフの鼻先を掠めた。

「いいから布団入れって」
「随分せっかちだな」

布団にもぐりこんだアヴドゥルがやっと探り当てた枕を引き寄せて、ポルナレフの隣に並べる。何度か位置を確かめるように頭を乗せては身体をもぞもぞと動かし、アヴドゥルはようやくベッドに横たわった。
目は見えないが、頬を撫でる吐息で、ポルナレフはアヴドゥルと向かいあっていることが分かる。沈黙が流れたが、やがて今日だけはどこまでもポルナレフを甘やかす大きな手が隣から伸びてきて、温かい指先が唇や瞼や頬を撫でた。目を閉じてじっとしていると、アヴドゥルの手は後ろ髪を梳いた後、ポルナレフの背骨をなぞって腰の後ろへ収まる。ふと浴室で感じた期待が今更頭をもたげてきて、ポルナレフの眠気はどこかに飛んでいってしまった。

「ポルナレフ、」

心なしかアヴドゥルの声も熱を帯びているように思える。ポルナレフは足や腕をアヴドゥルに絡ませて、全身でアヴドゥルにしがみついた。アヴドゥルは引き剥がすこともなく、あやすようにポルナレフの背中を何度も撫でている。
―――これはもう、いけるだろう。
温まり始めた布団の中で、ポルナレフの肌はうっすらと汗ばんでいた。いざ、とポルナレフがアヴドゥルの寝巻きに腕をすべり込ませようとしたとき、唐突に温かく柔らかいものがポルナレフの額に触れる。挨拶の時のような軽さでそれは離れていった。

「おやすみ、ポルナレフ」
「・・・は?」

急に放りだされたポルナレフは、闇の中でぽかんと口を開けた。

「ちょ、ちょっと待った!」
「どうした?」

アヴドゥルは急に大きな声を出したポルナレフに驚いたようだ。返事をした声には、先ほどまでの囁くような甘さはなかった。

「寝るのか?」
「寝るんじゃないのか?」
「なんで!こんなに良い雰囲気なのに!」

甲斐性なし!とポルナレフは布団の中でアヴドゥルの足を軽く蹴とばした。

「痛いじゃないか!」

アヴドゥルの声は怒っているというより、本当に困惑しているようだった。ポルナレフはそれが余計気に障って、続けざまにアヴドゥルの胸を拳でどんどんと叩く。

「どうしたんだ急に・・・さっきまであんなに眠そうにしてたくせに」
「さっきはさっき、今は今だ!」

お前だってその気になってただろ!と詰っても、アヴドゥルはなんのことだ?と取り合わない。
勝手に思い込んで盛り上がっていたと言われれば確かにその通りなのだが、ポルナレフはこみ上げる怒りと恥ずかしさで、アヴドゥルに八つ当たりすることしかできなかった。

「第一、」
「なんだよ!」
「病人にそんなことはできない。ただでさえ体力が落ちているのに、余計に疲れさせるような真似はできないだろう?」

ポルナレフはだからもう大丈夫なんだって!と主張したが、アヴドゥルは諌めるようにポルナレフの髪を撫でるだけだった。諦め切れないポルナレフはアヴドゥルの首筋に顔を埋め、今度は精一杯甘えてみせる。これはポルナレフが何かをねだる時に使う常套手段だ。

なあ、しようぜ。最近あんまりしてないし。
だめだ。今日は寝ろ。また治ったらすればいいじゃないか。
俺は今日したいのに!その方が元気になる気がする。アヴドゥルも俺のこと、元気になって欲しいと思うだろ?
ああ、思うさ。だから今日はしない。
意地悪すんなよ!俺のこと、大事じゃないのか?
大事だ。何よりもな。だから早く寝て、お前が元気になるのが私の一番の願いだ。

懸命に食い下がるポルナレフに、アヴドゥルも頑として譲らない。
ポルナレフは深い溜息を吐いて顔の半分まで布団を引き上げた。恋人はもう本当にする気が無いらしい。ポルナレフはついに諦めて寝返りを打ち、自分の中に溜まった熱を下げようとアヴドゥルに背を向ける。アヴドゥルはポルナレフが拗ねてしまったと思ったのか、詫びるようにポルナレフの腹に腕を回して抱きしめてきた。これでは意味がない。
ポルナレフは抗議しようと身体を捻ったが、アヴドゥルは腕の力を緩めることなく、ポルナレフを抱え込んで離さなかった。仕方なくポルナレフは横になったまま、背中に張り付くアヴドゥルの温もりを感じていたが、そうこうしている内にポルナレフにもだんだんと眠気が戻ってくる。

「アヴドゥル?」

もう寝た?という自分の声がおぼつかない。まだだ、というアヴドゥルの返事の方がよっぽどしっかりしていた。それでもまだ、このまま寝てしまうのがもったいない気がして、ポルナレフは自分でも何を言っているのか分からないまま、アヴドゥルに話しかけた。頭の中がふわふわして、現実と夢の間が曖昧だ。
ポルナレフが眠気に任せて垂れ流す取り留めのない話を、アヴドゥルは黙って聞いている。

「アヴドゥルって、いつもあんなに丁寧に身体洗うのか?」

俺、足の指なんてあんな風に洗ったことない。

「めったにしないな。特別に汚れた時は別だが」

アヴドゥルはくすくす笑って、ポルナレフの脇腹をさすった。

「自分ではしないのに、俺にはしたっていうのかよ」
「そうだ」

身体を撫でる手は気持ちいいけれど、離れてしまった腕の熱が寂しくて、ポルナレフは寝惚けたままアヴドゥルの腕を掴み、元のところへ引っ張っていく。笑っていたアヴドゥルは一瞬口を噤んで、それから前よりも強い力でポルナレフを抱きしめた。ポルナレフは満たされた気持ちのまま、瞼が落ちてくるのを感じる。

「なんで、そんなこと・・・」
「大切なものは大事に扱うのが当然だ。なかなか気持ち良かっただろう?」

そんなわけない、という意地っ張りな呟きがアヴドゥルに届いたかどうか、ポルナレフには分からない。ポルナレフの意識はそこで途切れ、穏やかな微睡の中にゆっくりと沈んでいった。

翌朝、ポルナレフはいつもより早く目が覚めた。まだアヴドゥルも起きないうちに、一人でこっそりベッドを抜け出し、顔を洗ってコーヒーを淹れる。頭も身体も嘘のように、すっきりと冴えていた。今までの朝は一体何だったんだろうと首を傾げたくなるほどだ。
ポルナレフはコーヒーを片手に棚を漁って便箋と封筒を探し、ダイニングテーブルに座った。日本にいる友人二人に宛てて、ああでもないこうでもないと頭をひねりながら手紙を書く。承太郎や花京院でも読めるように、簡単な英語で書こうと頑張ってはみるものの、なかなか上手くいかない。もともとポルナレフはあまり英語が得意ではなかった。文法もめちゃくちゃだし、綴りの方もかなり怪しい。あとでアヴドゥルに推敲してもらおう、とポルナレフは一旦ペンを置いた。

「珍しいな、お前がこんなに早く起きるなんて」

目を覚ましたアヴドゥルが、おはよう、と言いながらポルナレフに近づいてくる。あくびを噛み殺しているところを見ると、アヴドゥルはまだ少し眠いらしい。

「何してるんだ?」
「手紙書いてた」
「手紙?」

アヴドゥルが散らばった便箋の一枚を摘まみあげた。まだ乾いていないインクが文字の端々で光っている。ぐちゃぐちゃに消された後や、狭い隙間に書き足したような跡が紙いっぱいに溢れていた。

「昨日言っただろ。承太郎と花京院に手紙出すって」
「ああ」

思い出した、というようにアヴドゥルは頷いて、ポルナレフのコーヒーに勝手に口をつける。

「アヴドゥルの分も淹れてやろうか?」
「いい―――どうせもう朝食だ」

エプロンをつけ始めたアヴドゥルの後ろについて台所に入っても、ポルナレフが昨日のように追い出されることはなかった。渡された卵をボウルに入れて溶かしながら、ポルナレフはぴったりとアヴドゥルの隣に引っ付く。邪魔だ、と邪険にされて、ポルナレフはアヴドゥルがすっかりいつも通りに戻ってしまったことを知った。
次にあんな優しいアヴドゥルに会えるのは、いつだろうか。そしてもし、アヴドゥルが自分と同じような病にかかったら、自分も際限なくアヴドゥルを甘やかしてみたりするのだろうか。その時の自分とアヴドゥルを想像して、ポルナレフはにやけてしまいそうになる顔を慌てて引き締めた。頭の中を切り替えようとして、ふとアヴドゥルに用事を頼もうとしていたことを思い出す。

「あのさ、さっき書いてた手紙の推敲してくれねえ?」
「ああ。夜でもいいか?」

アヴドゥルはポルナレフの顔も見ずに返事をした。
メルシー、明日出しに行く!
ポルナレフは浮かれた気持ちのまま卵をかき回す。勢い余って少しこぼしてしまったが、アヴドゥルはいつもより早く焦げ目のついていくウインナーに夢中になっていて気づかない。こっそりこぼれた卵を拭きとりながら、ポルナレフは満ち足りたような幸せが全身に巡るのを感じた。

「なあアヴドゥル」
「なんだ、もう卵はできたのか?」

ポルナレフはちょっぴり少なくなった溶き卵の入ったボウルを差し出して、アヴドゥルの頬にキスをする。おはようのキス、と言うと、アヴドゥルはうるさそうに顔を顰めながらも、ポルナレフの頬にきちんとキスを返してくれた。

「俺、もう治ったぜ!なんていうか、すごい元気」
「見れば分かる」

アヴドゥルは呆れたように応えて、卵をフライパンに流し込んだ。流しに置いておけ、と空のボウルを渡される。
ぞんざいに扱われても、ポルナレフは少しも気にならなかった。これはつまり、自分がやっとアヴドゥルの隣に立つ権利を取り戻したということだ。好きな人に手放しで優しくされるのは嬉しいが、その人の役に立ったり、何かしてやることが赦されないのはもどかしい。

「暇なら、サラダの方もやってくれ」
「おう」
「新しいドレッシングは―――」
「冷蔵庫の下のとこだろ?」

ポルナレフは渡された野菜を切りながら、隣で忙しなく動き回るアヴドゥルの横顔を盗み見て、久々の健康を噛み締めた。
愛でしか治せない病があることを、ポルナレフはもう知っている。
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テーマ:ジョジョの奇妙な冒険
ジャンル:アニメ・コミック

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海野ヒレ

Author:海野ヒレ
生き物大好き:海野ヒレ

pixiv: http://pixiv.me/umino-hire

twitter: https://twitter.com/umino_hire

身分:腐海の底で汚泥を啜る大学生。これでも医学生よ!

誕生日:8/4 吉田松陰先生と一緒(旧暦)

血液型:AB型

好きなゲーム:一生不動の一位はサガフロンティア2。異論は認める。

好きな漫画:ほんと色々。オリジナルBL、擬人化、アンソロも読みますモグモグおいしいおかわり!百合も逝ける。でも大まかに言うとギャグは大体好きみたいよ。

属性:自然発生型腐女子。小説メイン、イラスト少々にて活動中。拍手、コメントを貰うと喜びにくるいもだえるのだ。

特技:マイナーなジャンル・キャラ・CPばかりに熱烈な愛を送る。時々切ない。

好きなものごっちゃで詳しく:銀魂、サガフロ2、ダンガンロンパ、ギャグマンガ日和、+チック姉さん、ジョジョの奇妙な冒険(3部)、クロノクロス、ジルオール、ドリフターズ、モノノ怪、さらいや五葉、魔法少女まどか☆マギカ、モンハン、討鬼伝、アサシンクリード、フロンティアゲート、牧場物語、聖剣伝説LoM、FFXなど

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