FC2ブログ
ポラロイド写真

回り込み解除

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
  • 日なたの家(アヴドゥル×ポルナレフ 3部後)

    category:JOJO二次創作小説

回り込み解除

こんにちは。

今回はアヴドゥル×ポルナレフのリクエスト短編になります。アヴポルが手探りで二人だけの生活を始めるお話。3部後、生存ルートを辿ったアヴドゥルさんがフランスでポルナレフと一緒に新生活をスタートしています。
正直スランプ気味つらい。ごめんなさい。キンクリ場面転換多し。いつかかわいくて甘いのも書きます・・・。

一個様、リクエストありがとうございました!
リクエスト内容は『付き合いたてで、どっちも手探り状態のアヴポル』でした。もうちょっとほのぼのした感じを目指そうとしたのですが、なんだか明後日の方向へ走ってしまいました・・・。ほのぼのどっか飛んでった。色々ごめんなさい・・・。

↓それでは本編は追記に格納!
日なたの家




朝の気配でアヴドゥルは目を覚ました。
隣で眠っているポルナレフを起こさないよう慎重にベッドから滑り降り、忍び足で窓へ近寄る。まだ夜の明けきらない空は西の端を紺色に染め、昇り始めた太陽が二人の寝室を青く浮かび上がらせた。軋む窓をゆっくりと押し上げれば、早朝の風が涼しくカーテンを揺らす。アヴドゥルは部屋の奥へ引き返すと、そのままベッド脇をすり抜けて廊下へ出た。

アヴドゥルはいつもポルナレフより先に起き出す。窓を開けてすぐ二階の寝室から一階の居間へ行き、日課の占いが終われば自由時間だ。コーヒーを飲みながら本や新聞を読むこともあるし、庭へ出て花の手入れをすることもある。そして時間が来ると朝食の準備をして、放っておけばいつまでも眠り続けるだろうポルナレフを二階まで起こしに行くのだ。

「なんで起きた時に、俺のことも起こさねーんだよ!」

ポルナレフはこの習慣に対してあまり良い顔をしなかった。

「それだと、お前ばっかり朝飯作ることになるじゃねェか!」
「私は早起きに慣れているから平気だ。お前に寝坊されて朝食が食べられないよりは余程良い」

思い当たる所があるのかポルナレフはぐっと言葉に詰まったが、すぐに拳を握りしめて反論する。

「う・・・で、でも!恋人ならフツー、同じ時間に寝て一緒に起きるだろ!」
「・・・そうか?」

アヴドゥルは首を捻った。そんな話は聞いたことがないが・・・百歩譲って仮に世間のカップルがそうであったとしても、自分たちがそれに合わせる必要はないだろう。アヴドゥルはもともと早起きに慣れていたし、それ以上に一人で過ごす静かな朝の時間が気に入っていた。 朝食を作る手間はこの時間を楽しむ代償だと思えば、大した苦労にもならない。
結局議論を重ねた結果、「朝食はアヴドゥルが作り、夕食はポルナレフが作ること。昼はどちらが作っても構わない」「朝は別々に起きるが、夜は一緒に居る限り同じ時間にベッドへ入ること」というルールが定められた。これが二週間前の話だ。

この衝突以来、二人の間には新たなルールが次々と生まれていった。
その内容は様々で、「掃除は週交代制」「洗濯は籠が一杯になる前に当番の者が洗うこと」といった家事に関するものから、「一人で外へ酒を飲みに行かないこと」「二人が家に居るときは必ず一緒に食事をすること」など日常生活に関することまで多岐に及んだ。

「・・・随分窮屈なことだな」

習慣となっている朝の占いを終えたアヴドゥルは苦笑まじりに独り呟いた。商売道具のカードを片付け、コーヒーを淹れようと立ち上がる。そこでソファーへ置きっぱなしになっている雑誌に気付き、アヴドゥルはやれやれと溜息を吐いた。「雑誌は読んだら古紙回収に出すこと」が決まりのはずだ。もう守られていないじゃあないか、とぼやきながらアヴドゥルは雑誌を取り上げ、ひとまずダイニングテーブルへそれを置いた。キッチンへ行き、どうせ後で朝食を作るのだからと多めにコーヒーを淹れる。カップを出すついでに朝食用の皿も食器棚から引っ張り出した。

「まあこれも、もうしばらくの辛抱か・・・」

カップにコーヒーを注ぎ、口を付ける。旅の間に思いを確かめ合ってから、僅か半月足らずで同棲を始めたのだ。ここが所謂一つ目の山、踏ん張りどころだろうか・・・。

「ふぁ・・・おはよ、」
「おはよう、ポルナレフ」

カップを持って居間へ戻ると、呼びに行くよりも早く目を覚ましたポルナレフが一階に下りて来ていた。ポルナレフは寝間着のままダイニングテーブルの前に腰掛け、生あくびを繰り返している。

「珍しく早いんだな」
「んー・・・朝飯は?」
「時間が来たら作ろうと思っていたところだ」
「ふうん・・・」

ポルナレフは寝惚け眼で頷くと、辺りをきょろきょろと見回し、テーブルの上の雑誌を手に取った。ぱらぱらとページを捲ってみてもう読み終わった物だと気づいたのか、また元の場所へ戻す。

「ソファーに出しっぱなしだったぞ」
「ああ、悪かったな・・・」

アヴドゥルの言葉に、ポルナレフはどこか顔を曇らせて歯切れ悪く謝った。まだ下ろしたままの髪を掻き上げ、落ち着かな気に椅子の上でもぞもぞと身動きしている。アヴドゥルはその様子に首を傾げながらも、一先ず朝食の準備に取り掛かろうとポルナレフへ背を向けた。

「どこ行くんだ?」
「お前ももう起きたことだし、少し早いが朝食にしようと思ってな」
「お、俺も!」

ポルナレフが唐突に大きな声を上げて椅子から立ち上ったので、アヴドゥルは驚いて振り返った。ポルナレフも自分の声の大きさに驚いたらしく、アヴドゥルを見つめたままテーブルの前で固まっている。ポルナレフははっとして我に返ると、蚊の鳴くような声で言葉を続けた。

「俺も・・・一緒に作る・・・」
「どうしたんだ、急に?」
「どうもしねえけど・・・毎日大変だろ、アヴドゥルばっかりさ」

唐突な申し出にアヴドゥルが困惑していると、ポルナレフはやけに必死な顔で食い下がってきた。

「折角早く起きたんだし、俺だって」
「それなら今日の昼に作ってくれないか。少し前に、ジョースターさんから仕事の話で手紙が来ていただろう?午前中は返事を書かないといけないから忙しいんだ」

決まり通り皿洗いは私がしよう、と言うとポルナレフはぱちぱちと目を瞬かせる。

「・・・分かった」

何か言いたげな様子で何度か口を開きかけては閉じるのを繰り返し、ポルナレフはようやくアヴドゥルが一人で朝食を作ることを承諾した。

「それじゃあテーブルの上を片付けておいてくれ。顔も洗って、寝間着も着替えて来るんだぞ」
「そーする」

ポルナレフは頷くと、雑誌を手に取って立ち上がる。何か引っ掛かるものを感じながら、アヴドゥルは今度こそキッチンへ向かった。

朝食の後もポルナレフはどこか沈んだ様子でソファに腰掛けていた。
財団から依頼される仕事も今日はないらしく、ぼんやりと膝の上の本を眺めているが、そのページは少しも進んでいない。アヴドゥルは心ここにあらずといった様子のポルナレフを心配しながらも、その後ろ姿に声を掛けることも躊躇われて、結局何も言わないまま書斎へ向かった。部屋の隅に据えられた机へ向かい、引出しを開ける。便箋と封筒を取り出すと、アヴドゥルはジョセフに宛てた手紙を書き始めた。
しかしペンを握ったは良いものの、思うように作業が捗らない。受け取った手紙の内容は仕事に関するものだったのだが、相手があれだけの関わりを持った馴染みの友人で、なおかつ自分とポルナレフの関係まで知っているとなれば近況報告も添えるのが普通だろう。特にジョセフにはポルナレフ共々、財団関係で今も世話になっている。むしろ何も書かない方が不自然だ―――。アヴドゥルも頭では分かっているのだが、どうしてもその辺りの話を書こうとすると今は手が止まってしまっていた。

「・・・アヴドゥル」

どれほど時間が経ったのだろうか。控えめなノックの音と聞き慣れた声が部屋に響き、アヴドゥルはペンを置いて立ち上がった。軋むドアノブを回して扉を開けると、エプロンを着けたポルナレフが立っている。

「昼飯、出来たんだけど」
「もうそんな時間か。分かった・・・行こう」

手紙はまだ書き上がっていないが、冷めてしまう前に食事を済ませた方が良いだろう。「食事をする時は一緒に」というのがこの家のルールでもある。
アヴドゥルはそのまま廊下へ出ると、ポルナレフと共にダイニングへ向かった。その間もポルナレフは終始無言である。並んで歩いていて、ふと手の甲が擦れ合っただけでも大げさに肩を跳ねさせるものだから、見ているこちらが気の毒になる程だ。 そわそわとして何か言いたいことがあるのは分かるのだが、普段うるさいほどこちらへ構ってくるポルナレフがそんな態度を取っているものだから、アヴドゥルの方も聞いていいものかどうか悩んでしまう。

「どうかしたのか?」
「え、ああ・・・いや・・・」

食事中も黙り込んだままのポルナレフに痺れを切らしたアヴドゥルが尋ねても、ポルナレフは言葉を濁すばかりだった。今までも幾度か小さなぶつかり合いはあったものの、こんなことは初めてだ。アヴドゥルは本能的に危険信号を嗅ぎ取っていた。このままにしておけば溝は深まるばかりだろう。・・・最悪の事態だけは、回避せねばなるまい。

「ポルナレフ、」
「うん?」

ポルナレフは顔を上げて、昼食のパスタをフォークに巻きつける手を止めた。

「今日は何か用事があるのか?」
「無いけど・・・どうかしたのかよ」

ポルナレフの顔にさっと不安の色が差した。澄んだアイスブルーの目がこちらの様子をじっと窺っている。旅の間に気づいていたが、ポルナレフは人懐こいように見えて、時折ひどく他人を警戒している節があった。擦り寄って来るからといって触れ方を間違えると、野生動物のようにすぐさま身を翻し、離れて行ってしまう。付き合う前はそれで度々苦労したものだが、恋人となった今でもそこは変わらない。

「午後から手紙を出しに外へ行こうと思ってるんだが」
「ああ、晩飯外で食ってくるのか?」

いいよ、俺も適当に一人で済ませとく。
ポルナレフは手元の皿に目を戻すと、パスタの巻き取りを再開する。

「いや、そうじゃない」
「じゃあなんだよ。夜も俺が作れってこと?」

慎重に言葉を選んだ方が良いとは分かっているのだが、結局アヴドゥルは気の利いた言葉が思い浮かばなかった。ポルナレフは怪訝そうにこちらを見つめている。これでは少し唐突すぎないかと自分でも思ったが、アヴドゥルは仕方なく言葉を続けた。

「あー、なんだ・・・お前もついて来ないか?」
「・・・は?」

ポルナレフは再び手を止めてアヴドゥルを見つめた。

「な、何で?俺、外行っても別にすること無いぜ」
「用が無いからと言って一日中家に籠もっているのも良くないだろう。何なら、ついでに買い物でもして帰ろう」
「買い物・・・」

そういや晩飯の材料なかったかも。
ポルナレフが呟いたのを見逃さず、アヴドゥルはやや強引に話を進める。

「それならちょうど良かった。食べ終わったらすぐに書き上げるから、待っていてくれ」
「なんだ、まだ終わってないのかよ?」
「ああ・・・あと少しなんだが」
「なら皿洗いも俺がしとく。アヴドゥルは早くそれ書いちまえよ」
「いや、」

流石にそこまでは、と断わろうとして、アヴドゥルはふと朝のポルナレフを思い出した。・・・ここは素直に甘えた方が良いのかもしれない。アヴドゥルは続けようとした言葉を呑み込んで、ポルナレフの好意を受け取る。

「・・・すまないな」
「全然」

ポルナレフは最後の一口を押し込むと、アヴドゥルより先に食器を持って立ち上がった。

「食器も俺が運ぶからそのままでいいぜ」
「そういう訳にはいかないだろう。自分でするさ」
「いいから」

置いといてくれよ。
ポルナレフはいつになく強い口調でアヴドゥルに念を押すと、こちらを見向きもせず足早にキッチンへ消えてしまった。残されたアヴドゥルは一瞬呆気にとられて何も言い返せず、溜息を一つ吐いて立ち上がる。ポルナレフに言われた通り、食器はそのままだ。
外へ出る約束は取りつけたものの、決して事態が好転したとは言えない。・・・どうしたものか。アヴドゥルは窓から曇りはじめた空を見上げ、もう一度独り溜息を吐いた。

結局手紙には当たり障りのない話を書いて締め括った。
まだフランスでポルナレフの家に身を寄せていることだけは書いたものの、その他の私的な話については殆ど触れていない。以前から逐一ポルナレフとの仲について報告していた訳ではないが、ジョセフがこれを読んで気を揉みはしないか少々心配だ。アヴドゥルは封をした手紙をしばらく眺め、送り先の住所をもう一度確認してから懐へ収めた。

「待たせたな」
「いや、俺も今洗い物終わったとこ・・・」

居間へ戻ると、ポルナレフは既に外へ行く準備を済ませソファに腰掛けていた。下ろしていた髪はきちんとセットされ、服も着古した部屋着から外出用の物に変わっている。待たせてしまっていたことは明らかだ。それでもポルナレフはこちらへ気を遣っているのか、文句一つ言わずアヴドゥルの後を着いてきた。健気ではあるが、どうもポルナレフらしくない。

「着替えたのか」
「ン、まあな・・・一応外出だし」

ポルナレフは頷くと、タンクトップの裾を摘まんでみせる。露出の多さは相変わらずだが、ポルナレフは旅の頃と違って目立たない服を着ることが増えた。対して、アヴドゥルは今でもゆったりとした故郷の服を好んで身に着けている。このようなフランスの田舎では物珍しげな目で見られることも多いが、アヴドゥル自身それを気にしたことはなかった。勿論、自分のことでポルナレフに肩身の狭い思いをさせているのではないかと思ったこともある。しかしポルナレフはいつも堂々とアヴドゥルの隣に並んで楽しげに振る舞っていた。
―――今日も、そうであってくれればいいのだが。アヴドゥルはちらとポルナレフの横顔を振り返る。その表情は少々固い。

「あれ、こっちのポストじゃねえの?先に買い物?」

家を出てすぐポルナレフは右へ曲がろうとした。直進しようとしたアヴドゥルから数歩離れたところで立ち止まり、不思議そうに首を傾げている。

「ああ・・・ちょうど切手を切らしていたから郵便局で出そうと思ったんだ」

アヴドゥルがポルナレフを手招きして呼び戻すと、ポルナレフはアヴドゥルから少し遅れて隣を歩き始めた。家から食料品店まではそれなりに距離があるが、最寄りの郵便局となるとそう離れていない。無言でも然程辛くない程度の距離だというのに、今は妙な沈黙がアヴドゥルの背中にのしかかってくる。ポルナレフも同様らしく、足元の地面を睨みながらしきりと落ち着かない素振りでポケットの中をまさぐっていた。

「・・・先にいつもの店行ってるぜ」
「分かった。これを出したら、すぐに行く」

いやに重苦しい時間が過ぎ、二人は郵便局の前で別れた。先に食料品店へ向かったポルナレフの背中を見送って、アヴドゥルはひとり郵便局の扉をくぐる。まだ古い時代の佇まいを残した小さな建物の中へ入ると、国際郵便を受け付けている窓口へ足早に近寄った。

「・・・うん?」

懐から封筒を取り出そうとしたところで、アヴドゥルはふと手を止める。手紙がない。上着のポケットも確認したが、それらしいものはどこにも見当たらなかった。

「どうかしましたか?」
「ああ・・・いえ、出そうと思っていた手紙が見当たらないもので」

怪訝な顔でこちらを見ている職員から離れ、アヴドゥルは服の隅々までまさぐって手紙を探した。家を出るまでは確かにあったのだが・・・どこかに落としたのだろうか?

「参ったな・・・」

まさかとは思いながらも、郵便局の入り口まで床を見回しながら戻る。扉を開けたところで思いがけず階段の上へ落ちている手紙を見つけ、アヴドゥルは首を傾げながらそれを拾い上げた。いつ落としたのかはさっぱり分からないが、とにかく戻ってきて良かった。少しばかり封筒は汚れたが、気になるほどでもない。宛名もしっかり読める。
アヴドゥルはしばらく封筒をひっくり返しては眺めていたが、結局またそれを懐へ収めた。ただ何となく、そうした方が良いような気がしたのだ。あんな妙な落とし方をしたのだって、きっと何か意味があってのことなのだろう。アヴドゥルはますます曇っていく空を見上げると、ポルナレフの待つ食料品店に向かって歩き出した。

「ポルナレフ!」
「遅かったな。ちょうど良かったぜ」

店へ入ろうとした所で、アヴドゥルはちょうど買い物を済ませて出てくるポルナレフと鉢合わせた。数日分を買い溜めしたのか、ポルナレフは両腕に大きな紙袋を二つ抱えている。アヴドゥルはすぐに片方の袋を受け取ると、ポルナレフと並んで家までの道を歩き始めた。

「手紙を探してたんだ」
「探す?・・・失くしたのか?」
「ああ、なんとか見つかったがな。郵便局の外で拾ったんだが、いつの間に落としたのかさっぱり気づかなかった」
「ふうん・・・」

まあ見つかったんなら良かったけどよ。
言い終わるなり、隣を歩くポルナレフは不意に眉を顰めた。空を仰ぎ、額に手を翳している。どうかしたのかと尋ねる前に、アヴドゥルも肌に冷たい水の粒を感じた。

「・・・雨だ」

あっという間に雨粒は大きくなって、二人の上から容赦なく降り注ぎ始める。アヴドゥルとポルナレフは無言で顔を見合わせると、荷物を抱えたまま大急ぎで駆け出した。たまたま近くにあった家の軒先に滑り込み、乱れた息を整える。

「あーあ・・・こりゃ完全に降られたな」
「なんとか家まで持つかと思ったんだが」
「面倒くさがらずに傘持って来りゃよかった」

ポルナレフは濡れていない地面に紙袋を置くと、乱れて額に張り付いた髪をうるさそうに払いのけた。アヴドゥルも壁に凭れて荷物を下ろし、強くなっていく雨脚を眺める。

「天気予報じゃ何も言ってなかったんだけどなあ・・・」
「通り雨なら、すぐに止むだろう。しばらくここで雨宿りさせてもらおう」
「・・・そうするしかねえか」

アヴドゥルの提案にポルナレフも頷いた。
ポルナレフはアヴドゥルから身体一つ分離れた所で佇み、俯きがちにぬかるんでいく外の地面を見つめる。

「どうした、やけに離れるんだな」
「あ、いや・・・」

ポルナレフはぱっと顔を上げてアヴドゥルを振り返ったが、アヴドゥルと目が合うなりすぐに視線を足元へ落とした。

「アヴドゥルは・・・俺と一緒に居るの、嫌じゃねえの?」
「何?」
「最近ずっとだろ。変に遠慮してるっつーか・・・。あんまり俺がくっ付きすぎるから疲れてんのかなって」

アヴドゥルは黙ったままポルナレフの肩へ腕を伸ばした。一瞬驚いて身を引こうとしたポルナレフをぐいと引き寄せる。

「そんな端にいたら濡れるだろう」

ポルナレフの肩は軒先から垂れる大粒の滴で濡れていた。アヴドゥルはハンカチを取り出して濡れた肩を拭いてやろうとしたが、ポルナレフは首を振ってその腕を押し返す。

「いいって・・・もう今更だし。ずぶ濡れだぜ、俺達・・・」
「だから拭くんじゃないか」
「俺よりアヴドゥルの方が濡れてる」
「気にするな」

アヴドゥルはもう一度ポルナレフの濡れた肩へ手を伸ばした。今度はポルナレフも大人しくハンカチで肩を拭われている。粗方拭き終わるとポルナレフは気まずそうな顔で礼を言い、後ずさってアヴドゥルから少し離れた。

「・・・ごめん、アヴドゥル」
「何故謝るんだ?」
「折角俺と一緒にこっち来てくれたのに、なんか色々上手くいかなくてさ・・・」

ポルナレフは俯いて足元の石を蹴った。小さな石は軒先から飛び出して、大きくなっていく水たまりの中へ落ちる。雨粒で出来る小さな波紋を押し退けるように、一際大きな波が立った。

「それは私のせいでもある。お前だけが悪い訳じゃあない・・・これは二人の問題だ」
「そうかな・・・」
「そうだ」

アヴドゥルがきっぱりと頷くと、ポルナレフは小さく息を吐いて空を仰いだ。

「こういう時どうしたら良いか分かんねェんだ、俺」

もう何年も誰かと一緒に居なかったからかも。
ポルナレフは少し困ったような顔で笑った。旅の間には一度も見せなかった恋人の顔を、アヴドゥルはじっと見つめる。

「他の人間と暮らすのってこんなに難しかったんだな。こっちに戻って来るまで、全然そんなこと思わなかったのに・・・アヴドゥルのこと、ちゃんと好きなのに」

アヴドゥルの『普通』と自分の『普通』は違う。頭では分かっているのに、自分の中の『当たり前』が通用しないことに苛立ちばかりが溜まっていく。

「いっそ一人だったらもっと楽なのかな、って思ったりしてさ・・・」

今からこんなんじゃあ、ダメだよな。
ポルナレフは唇を噛んで拳を握った。アヴドゥルは首を振ってポルナレフの腕にそっと手を重ねる。

「だから今日は朝からあんな調子だったのか?」
「そんなこと考えてるの気づかれたら嫌われるって思ったんだ。俺はアヴドゥルのこと好きだし・・・アヴドゥルにはこっちに来たこと後悔して欲しくなくて、それで、」
「後悔などするものか」

自分よりもお前のことが大切だから、私は何もかも捨てて、ここまで着いてきた。

「私の方こそ、すまなかったな。お前が何を考えているのか、もっと早い内にちゃんと聞くべきだった」

アヴドゥルの言葉にポルナレフは慌てて首を振る。違う、と言いかけたポルナレフの唇に指を当てて遮ると、アヴドゥルは額へ下りかかったポルナレフの髪をそっと掻き上げた。

「ポルナレフ、私達はお互いを縛り付けるために一緒に居るわけじゃあない。幸せになるために一緒にいるんだ」
「・・・うん」
「自分の故郷へ私を連れてきたことで、お前が引け目を感じる必要はない」
「じゃあお前も、もう変な遠慮とかすんなよな。俺だって心配したんだぜ、色々・・・」
「分かった、約束しよう」

私ももう少し甘えることを覚えた方が良いかもしれないな。
アヴドゥルは真面目な顔で頷いた。

「これからはもっとお互い楽に暮らせるようにしよう。自分の家で窮屈な思いをするなんて馬鹿馬鹿しいことだ」
「・・・なら今まで決めたこと、全部ナシにしていい?」
「ああ」

ポルナレフはうーんと唸ってから、首を捻る。

「でもそしたら、掃除は?」
「先に気になった方がすればいい」
「あー、洗濯とか」
「籠が一杯になったらやればいいさ」
「食事」
「食べたいものがある方が作る。あとは時間と要相談」
「・・・それでいっか」

ポルナレフはまだ何か言い出しにくそうに視線を彷徨わせている。

「たまには一人で飲みに行きたいんだろう?」

アヴドゥルが先回りして言い当てると、ポルナレフはばつが悪そうに笑って頭を掻いた。

「あー、うん・・・それ」
「旅の間だってそういうことはあったし、今更禁止する理由もないからな。私は気にしない。・・・ただし、あまり遅くなるなよ」

アヴドゥルの言葉にポルナレフは神妙な顔で頷く。

「なんていうか・・・俺、怖かったのかも」
「うん?」
「色々決めとかないと、アヴドゥルがいつかここを出て行っちまうんじゃあないかって・・・」
「私がお前に黙ってここを出て行くはずがないだろう」
「頭では分かってるんだけどさ・・・ずっと一緒にいないと、アヴドゥルが居なくなる気がして落ち着かなかったんだ」

縛り付けとかないと安心できないなんて、子供みたいだ。

「それにアヴドゥルって結構真面目なとこあるし、最初から何でもちゃんと決めとく方がやりやすいのかと思って」
「私だって人間なんだ、いい加減なところはあるさ。好きだからこそ許せることだって、たくさんある」

ポルナレフはにやりと笑みを浮かべると、アヴドゥルの肩を掴んでからかうように揺さぶる。

「なんか意外だな。もっと頑固なのかと思ってたぜ」
「融通が利かないと言いたいのか?」
「そーそー」

アヴドゥルがポルナレフを小突くと、ポルナレフは声を上げて笑った。
いつの間にか雨は弱くなり、ぽつぽつと水たまりの水面が揺れる程度までおさまっている。アヴドゥルは屋根の端まで近寄って、軒先から腕を差し出した。

「・・・このぐらいなら大丈夫そうだな」
「おう。さっさと家帰って、風邪引く前に着替えちまおうぜ」

ポルナレフはもう紙袋を腕に抱えている。アヴドゥルも地面に下ろしていた紙袋を抱え上げると、ポルナレフと並んで軒を離れ、また家に向かって歩き始めた。
雨上がりの庭を通って家の門をくぐり、玄関の鍵を開ける。先にアヴドゥルが家に入ろうとドアを開けた時、ポルナレフが急に服の裾を掴んできた。アヴドゥルは何事かと半分ドアを開けたまま、立ち止まってポルナレフを振り返る。

「なあ、アヴドゥルってスコーン嫌いだっけ?」
「いや?」
「ベーコンとエンドウ豆のスープは?」
「嫌いじゃあないが・・・どうしたんだ、急に」
「明日は俺が朝飯作る。今までのルールも無しにしたんだし、たまには良いだろ?あー・・・もしアヴドゥルが朝は一人で過ごしたいっていうなら、邪魔しないように俺ずっとキッチンにいるから。なんならコーヒー淹れて置いといてやるよ」
「・・・そういう遠慮はしない約束じゃあなかったのか?」

アヴドゥルはドアノブを掴んだまま微笑むと、首を伸ばしてポルナレフの頬に軽いキスを落とす。

「私もそろそろ、少し寝坊させて貰おうか」
「まかせとけって」
「そのかわりと言ってはなんだが、一つ私の願いを聞いてくれ」
「何?」

ぱちぱちと瞬きして、紙袋を抱えなおしたポルナレフがアヴドゥルの顔を覗き込む。

「今日の夕飯は一緒に作ってくれないか?」
「・・・喜んで!」

ポルナレフは以前通りの快活さで笑い、アヴドゥルの唇にキスを返した。
明日もしポルナレフが寝坊したら、アヴドゥルはきっと旅の間のように小言を言いながらその手伝いをすることになるのだろう。そうやって一緒に居ればいいのだ。簡単なことなのに、ここへ辿り着くまでひどく遠回りしてしまったような気がする。

「そういや、手紙に俺達のこと書いたのか?」

玄関へ入ると、鍵を閉めたポルナレフがアヴドゥルの方へ小走りに近付いてきた。

「ん?ああ・・・二人でまだフランスにいるとは書いたが」
「なンだよ~、もっと色々あるだろ!次返事来たら、ちゃんと書いといてくれよな」
「・・・そうだな。何なら写真でも撮って送ろう」
「写真・・・?この家、カメラあったっけ?」

ちょっと探してくる!
ポルナレフが駆け出したかと思うと、数秒後には階段を一段飛ばしで上がる大きな足音が家中に響き渡る。一人残されたアヴドゥルは苦笑して、懐から濡れた封筒を取り出した。切手のない封筒は雨を吸って波打っている。

「すいません、ジョースターさん。一日遅れます・・・」

アヴドゥルは居間を横切って窓を開け、ぱちんと一つ指を鳴らした。たちまち灰になった手紙は風に乗り、ちらちらと輝く小さな光の粒となって日の射し始めた庭へ流れていく。眩しい太陽に目を細めながら、アヴドゥルはいつまでもその景色を眺めていた。
スポンサーサイト

テーマ:ジョジョの奇妙な冒険
ジャンル:アニメ・コミック

  • comment
    form

  • コメントの投稿

回り込み解除

secret

  • trackback
    form

  • トラックバック

回り込み解除


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

YES I AM!

海野ヒレ

Author:海野ヒレ
生き物大好き:海野ヒレ

pixiv: http://pixiv.me/umino-hire

twitter: https://twitter.com/umino_hire

身分:腐海の底で汚泥を啜る大学生。これでも医学生よ!

誕生日:8/4 吉田松陰先生と一緒(旧暦)

血液型:AB型

好きなゲーム:一生不動の一位はサガフロンティア2。異論は認める。

好きな漫画:ほんと色々。オリジナルBL、擬人化、アンソロも読みますモグモグおいしいおかわり!百合も逝ける。でも大まかに言うとギャグは大体好きみたいよ。

属性:自然発生型腐女子。小説メイン、イラスト少々にて活動中。拍手、コメントを貰うと喜びにくるいもだえるのだ。

特技:マイナーなジャンル・キャラ・CPばかりに熱烈な愛を送る。時々切ない。

好きなものごっちゃで詳しく:銀魂、サガフロ2、ダンガンロンパ、ギャグマンガ日和、+チック姉さん、ジョジョの奇妙な冒険(3部)、クロノクロス、ジルオール、ドリフターズ、モノノ怪、さらいや五葉、魔法少女まどか☆マギカ、モンハン、討鬼伝、アサシンクリード、フロンティアゲート、牧場物語、聖剣伝説LoM、FFXなど

ファンサーチ、検索参加中です 宜しければリンクからどうぞ
TOPのアイコンはリアルの友達にいただきますたん!

最新記事

カテゴリ

最新コメント

ランキング参加中ですの。

最新トラックバック

月別アーカイブ

カレンダー

10 | 2018/11 | 12
- - - - 1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 -

リンクとかそんなの


ウ印*

ウ印*

ウ印*

ウ印*

ウ印*
↑このブログのバナーです。リンクはフリーなのでどれでも貼ったり剥がしたり、ご自由にどうぞ!

アクセスランキング

[ジャンルランキング]
アニメ・コミック
817位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
少年向けコミック
177位
アクセスランキングを見る>>

ここじゃないどこかへ行く

検索フォーム

RSSリンクの表示

ブロとも申請フォーム

QRコード

QR

アクセスカウンター

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。