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  • 幸福は目隠しの向こう(吉良×ディアボロ 荒木荘 リクエスト)

    category:JOJO二次創作小説

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こんにちは。

今回は吉良×ディアボロのリクエスト短編になります。レクイエムの手違いで一時的な盲目状態になってしまったディアボロと、次の死までディアボロをお世話する吉良さんのお話。二人はラスボスたちが暮らす六畳一間の荒木荘に住んでいます。一応付き合ってる設定です・・・。

西7様、リクエストありがとうございました!
リクエストは、後天的盲目になってしまったボス(吉良ボス)・・・ということでした。こんな感じになりましたが・・・いかがでしょうか・・・。

7月31日までまだまだリクエスト募集中ですので、どなたでもお気軽にリクエスト下さい!

↓それでは本編は追記に格納

幸福は目隠しの向こう




初めは吉良も心配などしていなかった。
ディアボロはいつも家の外だろうが中だろうが目を離すとすぐに死んでいたし、買い出しに行かせても近所のスーパーから戻って来るまで最低2時間は掛かる。帰りが遅いのはいつものこと―――他の住人が口を揃えて言うように、吉良もディアボロの帰りを気長に待つつもりでいた。・・・いたのだが。

「ちょっと遅すぎやしないかい」

もう夕飯の支度をする時間じゃあないか。
ディアボロが出て行ったのは朝食後すぐだったはずだ。優に6時間は経過している。イライラと爪を噛み始めた吉良に、本を読んでいたプッチがまあまあと宥めるような声を掛けた。

「久しぶりに外に出たから、ドッピオ君のためにどこかへ寄っているのかもしれないよ」

確かに、今までそういうこともあった。いつだったか、余ったお金は小遣いにして良いと言ったら、ディアボロは本屋に寄り道していたらしく、いつもより大分帰りが遅かったことがある。しかし今日の買い出しではそれほど余裕のある金額を渡している訳でもなく、せいぜい買えても駄菓子一つ程度のはずだ。それが何故ここまで・・・。

「・・・少し近くを探してみるよ」

いつもなら自分の手を煩わせるような真似をする輩には苛立ちしか覚えないのだが、今日は何故か妙な胸騒ぎがする。いてもたってもいられず、吉良は家の鍵と携帯電話を掴んで立ち上がった。もうじき日が沈んで暗くなる。夜になってから探しに行くよりは良いだろう。

「何かあったら家の電話に連絡する」
「分かった」

とことんDIOのこと以外に興味を持たないプッチは、本からちらと顔を上げて頷いただけだった。

「ありがとう、頼んだよ」

吉良が慌ただしく靴を履いていると、プッチの隣で差し込む西日を避けながら寝転がっていたDIOが声を上げる。

「おい吉良、飯はどうするつもりだ?」
「帰ってきたら作るから、少し待っててくれ」

今そんなことに構っている暇はないんだ。
振り向きもせず答えた吉良は、DIOの返事も待たないで荒木荘を飛び出した。道へ出てスーパーのある方へ曲がってからは、どこをどう走ったのか記憶が無い。あてもなく探し回るうち、吉良はいつの間にか自分が住宅街を抜けていたことに気づいた。息が切れた吉良は辺りを見回しながら夕風の吹く田圃道を歩く。
ここは自分が初めてディアボロを連れてスーパーへ行った時に歩いた道だ。少し遠回りになるというのに、二人で出かけるときディアボロはいつもこの道を好んで歩いた。二人きりになれる時間は長い方がいい、と言って笑う恋人の姿は今でもはっきりと思い出せる。君は今、一体どこで何をしているんだ・・・。
吉良は額に滲んだ汗を拭い溜息をついたが、ふと前方に見えた人影に目を凝らした。

「・・・ディアボロ?」

あの奇抜な髪は間違えようもない。スリットの入ったズボンに、吉良の買い与えた黒いシャツという服装も出て行った時のままだ。探し人は落ち着かな気に辺りを見回しながら、服が汚れるのも構わず畦道に座り込んでいる。夕闇が迫りかけた田舎道の真ん中で、背を丸めたその姿は酷く頼りなく見えた。熟れた橙の日に照らされて、化粧を施した横顔は深い影を刻んでいる。緩い風に見慣れた長い髪が揺れていた。

「そんなところで何をしているんだい」

足早に近寄って名前を呼ぶと、ディアボロは弾かれたようにこちらを振り向いた。

「吉良?・・・吉良なのか?」
「今、何時だと思っているんだ。もう日が暮れてしまうよ。早く帰らないと」
「良かった、助かった・・・」

吉良は道端に散らばった食料品を見て顔を顰めたが、ディアボロは荷物など気にも留めず辺りをきょろきょろと見回している。どうも様子のおかしいディアボロが気になって、吉良は放り出されたままのビニール袋を拾い上げるよりも先にディアボロの元へ向かった。

「何をしているんだい・・・ほら、早く立って」

腕を掴むと、ディアボロは過剰なまでに反応してビクリと肩を跳ねさせる。構わず引っぱり上げようとしたが、ディアボロが座り込んだまま子供のように吉良の服へしがみ付いてきたので、それは叶わなかった。

「ほ、本当に吉良なのか?俺を騙してるんじゃあ・・・」

小声でぶつぶつと独り言を呟きながら、ディアボロは何かを確かめるように吉良の身体を撫で回している。あっけにとられて固まっていると、遂にディアボロの『彼女』は吉良の首筋を伝って顔まで伸びて来た。べたべたと熱心に口元から頬を触り、額や目元までくまなく指を這わせている。

「一体どうしたんだ」

普段ならば積極的な『彼女』に喜んで身を任せているところだが、今は状況を理解する方が先だ。吉良は顔に纏わりつく『彼女』を掴んで引き剥がすと、一先ずディアボロを落ち着かせるために隣へしゃがみ込んだ。顔を覗き込んでディアボロと目を合わせようとしたが、ディアボロはどこか焦点の合わない瞳をうろうろと彷徨わせている。

「・・・何も見えないんだ」
「何だって?」
「吉良、俺は今・・・目が見えない・・・」

吉良は『彼女』を握りしめたままぽかんと口を開けた。

「どうして?」
「そんなの俺が聞きたいぐらいだ。転んで頭を打ったところまでは覚えているんだが・・・」

ディアボロは眉を顰め、こめかみをしきりに擦って何かを思い出そうとしている。

「つまり、ここで一度死んだってことかい」
「ああ、多分な。それでレクイエムから戻ってきて、目が覚めたら真っ暗だった」
「変だね。君の目に何か傷があるようには見えないし・・・他におかしなところもないよ」
「そうなのか?俺は何も見えんぞ・・・真っ暗で・・・光の方向も分からない。完全な闇だ」

これは思っていたよりも深刻な事態かもしれない。ディアボロもこんなことは初めてなのか、自分の状況に困惑しているようだ。

「目が見えなくなってからは、まだ一回も死んでないんだね?」
「・・・俺の認識出来る範囲で言えば、一度もない。誰も近くを通らなかったし、この状態で迂闊に動くのも危険だからな。昼頃から、一人でずっとここに・・・」

ディアボロは不安げに眉を下げて、吉良の腕にしがみついている。吉良はどうしたものかと溜息を吐いて恋人を抱き寄せると、安心させるようにぽんぽんと背中を叩いた。ようやく吉良が本物だと分かって安心したのか、ディアボロは大人しく腕の中に収まったまま、疲れ切ったようにぐったりとしている。異常な状況の中ずっと気を張っていた上に、何時間も飲まず食わずだったのだ。体力も気力も消耗しているのだろう。

「今何時だ?」
「もう6時過ぎだよ。帰ったら夕飯の準備をしないと」

吉良の言葉を聞いた途端、自分が何をしに家を出たのか思い出したらしく、ディアボロは慌てて近くの地面をまさぐり始めた。

「夕飯・・・そうだ!買った物は・・・」
「この辺りに全部落ちてるよ。肉や魚はもうダメかもしれないけど、他は大丈夫そうだ」

兎に角ここにいても仕方がない。吉良はあちこちに散らばったものを掻き集め、ビニール袋に詰め直した。二つの袋を纏めて持ち上げてみたが、それほど重くない。これなら片手でも十分持てるだろう。

「荷物は私が持つから、君は私の腕に掴まって歩くんだ。いいね?」
「・・・その方法で本当に大丈夫なのか?」
「目が見えない人の誘導をするときは、腕を持ってもらうのが良いらしい。昔何かで習ったことがあるよ」
「分かった・・・」

半信半疑で頷いたディアボロはぎこちない動きで立ち上がると、手探りで吉良の二の腕辺りを掴んだ。

「それじゃあ、少し進んでみるよ」

吉良が数歩足を踏み出すと、少し遅れて後方のディアボロも足を出す。リズムが落ち着いてきたのを見計らって、吉良は少しだけ歩く速度を上げた。

「着いて来られそうかい?」
「なんとかな・・・」

ディアボロは吉良の腕に縋りつくようにして足を動かしている。知り合いに見られると面倒なことになりそうな光景だが、幸いこの田舎道に人気はない。辺りは夕闇に包まれて薄暗く、もう東の空には星が輝き始めていた。

「ここに来てレクイエムも少しは大人しくなったと思っていたんだが・・・やってくれたな」

ぎこちなく足を出しながら、ディアボロは舌打ちした。

「大人しくなった?」
「ああ。今は何故か死んだ場所で生き返るようになっているが、前は死ぬ度に所構わず飛ばされて、生きた心地もしなかったぞ」

あの頃は数十秒おきに死んでいたから、今の生活でもかなりマシになった方だとディアボロは言う。

「そういえばこんな状態で家に帰って大丈夫かな」

吉良はふと腹を空かせたDIOのことを思い出し、足を止めた。吉良の言葉に俯いていたディアボロはハッと顔を上げる。

「大丈夫な訳ないだろう!そうだった・・・くそっ、あいつらすぐに目が見えないことに勘付いて、俺を襲うに決まってる・・・」

吉良としてはこの際一度食べられでもしたら、レクイエムの調律が戻って目が見えるようになるのではないかと思うのだが、どのような状況であっても本人は最後まで生にしがみついていたいらしい。

「電話して外食してもらおうか」

首がちぎれそうな程頷いているディアボロを横目に、吉良はポケットから携帯を取り出して家へ電話を掛ける。数回コール音が続いた後、誰かが受話器を取り上げた。

「もしもし・・・プッチかい?」
「ああ。ディアボロが見つかったのか?」

思った通りプッチが電話を取ってくれたらしい。後ろで何やら声が聞こえるが、大方目を覚ましたカーズと腹を空かせたDIOが騒いでいるのだろう。

「いや、それがなかなか見つからなくてね。どこへ行ったのやら・・・。とにかくもう少し探すから、夕飯は作れそうにないんだ。今日はみんなで外食してくれ」
「君の分は?」
「私もディアボロを見つけたら外で適当にすませるよ」

それじゃあね、と言って吉良は電話を切る。自分たちが家に帰る頃には、向こうも出払っているだろう。吉良は携帯をしまうと、買い物袋を持ちなおした。ぬるかった風が少し冷たくなり始めている。汗が引いて肌寒いくらいだ。ディアボロも同じなのか、腕を掴んだまま吉良の方へぴったりと身体を寄せてきた。

「家に帰ったら着替えて、食事にしよう」
「・・・いいのか?あんな嘘を吐いて」
「大丈夫だよ。大食いが二人もいるから、当分帰ってこないだろう」

ご飯を食べたらお風呂に入れてあげるよ、と言うとディアボロは複雑な顔をした。

「そんなことまで介助されないといけないのか・・・」
「だって君、どれがシャンプーかも分からないだろう」
「・・・それはそうだが」

まだ腑に落ちない様子でディアボロが頷く。触れあっている部分がじんわりと温かい。

「なんなら歯磨きもしてあげようか」
「断る。ガキじゃああるまいし」

吉良が声を上げて笑うと、からかわれたディアボロは眉間に皺を寄せたが、それでも吉良につられたように少し笑った。

家に着く頃にはすっかり辺りも暗くなっていた。案の定プッチ達は先に家を出たのか、外から見ても部屋の明かりは消えている。誰かが残っている気配もない。
家の鍵を開けると、吉良は明かりをつけて荷物を置き、ディアボロの靴を脱がせた。そのまま手を引いて風呂場の前で服も脱がせ、洗面台で軽く泥を落としてから洗濯機に放り込む。ディアボロに部屋着を着せてちゃぶ台の前へ座らせるまで、優に20分は掛かった。

「ふう・・・意外と骨が折れるね」
「ああ・・・」

ディアボロも疲れた様子で畳に座り込んでいる。普段は簡単な作業が上手くいかないと、それだけでストレスが溜まるものなのだろう。

「適当に何か作るよ」

所在無く辺りを窺っているディアボロをおいて、吉良は買ってきた物を片付け、冷蔵庫を覗き込んだ。肉や魚が無いとなると作れるメニューは限られてくる。加えて今のディアボロには複雑な動きが出来ないため、箸を使わずに食べられるものが良いだろう。更に欲を言えば、あまり時間もないので簡単に作れるものが良い・・・。
それら全てを考慮した結果、吉良は野菜の残りと卵、冷やご飯を使って雑炊を作ることにした。湯気の立つ雑炊と漬物を盆へ乗せてちゃぶ台に運ぶと、腹が空いていたのかディアボロはすぐさま匂いに反応する。

「・・・なんの匂いだ?」
「雑炊だよ。消化にも良いし、スプーンで食べられるから君も楽だろうと思ってね」
「『ぞうすい』?」
「知らないのかい?この家で作ったのは、これが初めてだったかな」

初めて雑炊を食べるディアボロには、それがどういうものだか良く分からないらしい。レンゲがないのでスプーンで代用しているが、ディアボロは渡されたスプーンを握りしめたまま固まっている。

「ど、どこに皿があるんだ・・・?」
「ああ・・・そうか」

今の君には、そこから教えないといけないのか。
吉良はディアボロの後ろへ回り、スプーンを握る『彼女』に自分の手を重ねた。器の方へ『彼女』を誘導し、スプーンで一口分掬って、今度はそれを口元へ持って行く。目が見えないせいか、いつもは優美な『彼女』の動きもひどくぎこちない。熱いから気を付けるんだよ、と注意する間もなくディアボロは舌を火傷して悲鳴を上げた。涙目になって口元を押さえるディアボロに水を飲ませながら、吉良は溜息を吐く。
こんなことになったのも本人のせいではないと分かっているのだが、元々それほど気の長い方ではない吉良はすでに頭痛がし始めていた。

「もう私が食べさせてあげた方が早いんじゃないかな・・・」
「うう・・・」

吉良の提案に、ディアボロは渋々頷いた。吉良が受け取ったスプーンで雑炊を掬い、息を吹きかけて冷ます。唇へスプーンを当ててやると、ディアボロは口を開き、恐る恐る伸ばした舌先でそれをつついた。

「ン・・・・・・」

大丈夫だと分かると、吉良が押し込むまでもなくディアボロは首を伸ばして自らスプーンを口内に引き入れる。吉良がスプーンを引き抜くと、ディアボロはもぐもぐと雑炊を咀嚼して呑み込んだ。それが終わると、また大人しく口を開けて次を待っている。鳥のヒナに餌をやっているような感覚だ。

「ちょっと新鮮で楽しいね」
「・・・いいから、早く次をくれ。腹が減ってるんだ」
「分かってるよ」

ディアボロが最後の一口まで食べ終わると、吉良は食器を片づけて風呂の準備をした。

「食べてすぐで悪いけど、もう風呂に入ってもらうよ。プッチ達が帰って来る前に済ませないといけないからね」
「俺は構わんが、お前はいつ飯を食うんだ」
「君を寝かせた後かな。財布を持って出るのを忘れていたから、外食はやめたことにするよ」
「・・・相変わらず口の上手い奴だな」

ディアボロはふんと鼻を鳴らして立ち上がった。吉良が近寄って手を取り、脱衣所まで誘導する。ディアボロと一緒に裸になった吉良は、風呂場へ入るなりシャワーのコックを捻った。いきなり冷たい水を足に浴びたディアボロは飛び上がったが、世話をして貰っている手前かぶつぶつと小言を言うだけに留まる。

「せめて一言言ってから水を出してくれ・・・」
「悪かったよ。まさかそんなところに足があると思わなくてね」

吉良が座らせたディアボロの髪を洗いながら謝ると、ディアボロは小さく溜息を吐く。その後も目に泡が入って滲みるだの耳に水が入っただのと一頻り騒いだものの、なんとか二人でシャワーを終えることが出来た。さっきと同じようにディアボロへ服を着せて、洗面台で歯磨きをさせ部屋に戻る。吉良が布団を敷いている間、ディアボロはこれぐらい自分で出来ると言い張った末に渡されたドライヤーで髪を乾かしていた。

「もう寝るのか?」
「疲れているんだろう。それにプッチ達が帰って来る前に寝てしまった方が君も楽だよ」

まだ眠くないと子供のように愚図るディアボロを宥めて布団に入れると、吉良はディアボロの横へ添い寝するように寝転ぶ。

「・・・吉良?」

目が見えないディアボロは吉良が何をしているのか分からず、きょろきょろと目を動かしている。

「何処にいるんだ?」
「君の横に寝ているよ」
「・・・横?横のどの辺りに・・・」

目を瞬かせて腕を伸ばそうとしたディアボロの頭を撫でると、先程まで不安げだったディアボロは猫のように目を細めて擦り寄って来た。初めの頃はこちらが心配になるほど警戒していたというのに、随分と懐いたものだ。吉良は微笑んで布団の上に投げ出された『彼女』を撫でさすった。
そうしている内に、昼間の疲労も手伝ってか、あれ程眠くないと言っていたディアボロにも次第に眠気が訪れてきたらしい。降りてくる目蓋に抗おうとしているが、身体の方は温かい布団の中でうつらうつら心地良い眠りに落ち始めている。

「吉良・・・」
「ン?なんだい」
「俺はこんな身体になってから、ろくな人生じゃあなかったが・・・お前に会えて良かったと思ってる」

どういう風の吹き回しか、妙なことを口走り始めたディアボロに吉良はぽかんと口を開けた。眠気のせいだろうか、とてもではないが恋人の口から出たとは思えないような言葉だ。

「どうしたんだい?急にそんなことを言うなんて・・・君らしくないね」
「こういう時になって初めて分かるものだな。今まで気づかなかった。俺はここへ来て、お前と出会って本当に・・・」

一瞬、何も見えないはずのディアボロの目がはっきりと吉良を捉えた。す、と伸びた『彼女』が吉良の頬を包み、驚くほどの正確さでディアボロの唇が吉良のそれと触れ合う。

「おやすみ、吉良」

吉良はしばらく呆然としていたが、気付いた時にはディアボロはすでに目を閉じて枕へ顔を埋め、寝息を立てていた。眠りを妨げないよう、吉良はそっと畳に起き上がって眠っているディアボロを見下ろす。
夕方のことを思い出しながら穏やかな寝顔を眺めていると、玄関の方からざわざわと話し声が聞こえてきた。どうやら同居人たちが帰って来たようだ。吉良はもうしばらくこうしていたかったが、そういう訳にもいかず、プッチ達を迎えて自分も夕飯を準備しようと立ち上がった。

「ただいま。外で食べて来なかったのかい?」
「ああ・・・財布を持って出るのを忘れてたから、もう一度外へ出るのも面倒になってね。結局家で作ったんだ」
「なるほど。お疲れ様」

吉良が用意していた言い訳に何の疑問も持たなかったのか、プッチはそれ以上の詮索もせず、襖を開けてディアボロが寝ている部屋の中へ入っていった。カーズとDIOは興味津々で鍋の中の雑炊を眺めていたが、プッチの言葉でようやくいなくなったディアボロのことを思い出したらしい。

「そういえばディアボロがいなくなったらしいなァ」
「吉良、奴はどこだ?」
「ディアボロかい?先に寝たよ。疲れているみたいだから、そっとしておいてやってくれ」

聞いているのか居ないのか、嬉々として部屋へ消えていく人外どもを見送って、吉良は一人溜息を吐き鍋を掻き回した。

翌朝、目を覚ました吉良は一番にディアボロの布団を覗き込んだ。ディアボロは布団にすっぽりと包まって身体を丸め、まだ眠っている。閉じたカーテンの隙間から差し込む朝日が、膨らんだ布団に光の筋を描いていた。布団を剥いでぺちぺちと頬を叩くと、ディアボロは呻くような声を上げて吉良の手を振り払う。

「ディアボロ、起きてくれ」
「ん、う・・・んん・・・?」

ディアボロはしょぼしょぼと瞬きを繰り返しながら眩し気に朝の光へ手を翳した。

「・・・なんだ、吉良か」
「ディアボロ、君・・・見えてるのかい?」
「ああ、どうもそうらしいな」

こちらが心配してやっているのに、随分と呑気なものだ。
ディアボロは寝転がったまま伸びをして壁の時計を見ると、まだ7時も来ていないぞ、と言って顔を顰めた。

「どうして急に見えるようになったんだ・・・」
「あ?吉良、お前気づかなかったのか」

吉良を見上げていたディアボロは無造作に頭を掻きながら布団の上へ身を起こし、壁で眠るカーズを睨みつける。

「深夜に一度食われたんだが、見えるようになったのは多分それのせいだな。・・・いや、『おかげ』と言うべきか?とにかく、今度はレクイエムが正常に発動したんだろう」

目が見えるようになったディアボロには、昨日のような儚げなしおらしさは微塵もない。吉良自身、昨日のことは夢だったのではないかと思い始めているほどだ。

「・・・とにかく安心したよ」

吉良の言葉に、ディアボロは真面目な顔で頷いた。

「そうだな。あれは不便すぎる」

お前に面倒をかけっぱなしなのも情けないしな。
にやりと笑ったディアボロに、吉良は曖昧な声を返す。正直、ディアボロの世話に楽しみを見出し始めていた吉良としては、もう少しあのままでも良かったのだが・・・。そんな吉良の胸の内も知らず、ディアボロは腕を組むと、少し感慨深そうな顔で吉良を見た。

「それにしても不思議なものだな」
「なにがだい?」
「困難に直面したときにこそ、本当に自分のことを思ってくれる人間が分かるというが・・・あれは本当だったのか」
「私のことを言っているのかい」
「・・・まあ、そうなるな」

ディアボロは澄ました顔で髪を掻き上げる。何だか素直じゃないね、と言うとディアボロはクスクス笑って吉良の肩へ顔を埋めた。

「それから、」
「まだあるのかい」
「昔聞いた話だが、幸福というのは目に見えないんだそうだ。普段見えているものに遮られて見ることが出来ない・・・だから普段見える世界が見えなくなったとき、初めて見ることが出来るらしい」
「なるほどね」

吉良が頷くと、ディアボロは吉良の頬へ手を伸ばし、頭を抱え込むように自分の方へ抱き寄せた。こんな風にディアボロが甘えてくるのはいつ振りだろうか。

「俺はそんなこと、これっぽっちも信じてなかったんだがな」
「ン?」
「昨日、見たんだ。生まれて初めて見た。その幸福とやらをな」

ディアボロはとびきり甘い顔で吉良の顔へキスを散らしていく。最後に唇へ軽く口づけて、ディアボロは吉良を抱きしめた。これもイタリア人なりの口説き方の一つなのだろうか。―――そうだとしても、悪い気はしないな。吉良はディアボロの抱擁に応えるように腕を回す。

「それでも私は目が見えた方がいいよ。君のことはちゃんと見ていたいんだ・・・どんなときでもね」

吉良の言葉にディアボロはしばらく固まった後、急に声を上げて笑い出した。お前は本当に日本人らしくないな、と言って笑うディアボロはそれでもどこか嬉しそうだ。

「俺もだ、吉良。お前が見えている方が、ずっといい」

幸福など見えなくても、いつだってその気配は感じている。それで十分だ。
吉良は静かに微笑んで差し込む朝日の中でディアボロを抱きしめると、今度は自分からもう一度口付けを贈った。
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テーマ:ジョジョの奇妙な冒険
ジャンル:アニメ・コミック

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海野ヒレ

Author:海野ヒレ
生き物大好き:海野ヒレ

pixiv: http://pixiv.me/umino-hire

twitter: https://twitter.com/umino_hire

身分:腐海の底で汚泥を啜る大学生。これでも医学生よ!

誕生日:8/4 吉田松陰先生と一緒(旧暦)

血液型:AB型

好きなゲーム:一生不動の一位はサガフロンティア2。異論は認める。

好きな漫画:ほんと色々。オリジナルBL、擬人化、アンソロも読みますモグモグおいしいおかわり!百合も逝ける。でも大まかに言うとギャグは大体好きみたいよ。

属性:自然発生型腐女子。小説メイン、イラスト少々にて活動中。拍手、コメントを貰うと喜びにくるいもだえるのだ。

特技:マイナーなジャンル・キャラ・CPばかりに熱烈な愛を送る。時々切ない。

好きなものごっちゃで詳しく:銀魂、サガフロ2、ダンガンロンパ、ギャグマンガ日和、+チック姉さん、ジョジョの奇妙な冒険(3部)、クロノクロス、ジルオール、ドリフターズ、モノノ怪、さらいや五葉、魔法少女まどか☆マギカ、モンハン、討鬼伝、アサシンクリード、フロンティアゲート、牧場物語、聖剣伝説LoM、FFXなど

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