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  • 猫ひっかいた(承太郎×ポルナレフ 花京院×ポルナレフ 3部)

    category:JOJO二次創作小説

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こんにちは。

今回は承太郎×ポルナレフと花京院×ポルナレフで、3部の旅の間のお話。『好きは伝染るの』の続きのようなお話ですが、おそらく単品でも読めます。一応ポルナレフは花京院と付き合っている設定です。ビッチナレフ&謎のキンクリ場面転換。花京院が若干ヤンデレ気質かもしれません。多分きっとこれから花京院VS承太郎。
はっきりとしたエロはないですが、そこはかとなく性行為を思わせるような描写があるのでご注意を。


それでは小説はいつものように追記に格納↓



猫ひっかいた




昼下がりの太陽に街全体がまどろんでいるような午後だった。
物資補給の関係で早めに旅程を切り上げた一行は、無事本日の宿の確保も終え、これから市場や店を回って不足品の買い出しに行くところである。と言っても、実際に買い出しを任されたのはポルナレフと花京院だけで、他のメンバーはホテルで待機し、それぞれSPW財団の人間と接触することになっていた。大きな街へ立ち寄ったことで財団と直接接触を持てる今、大人たちはそれぞれ情報交換をし合う必要があるらしい。承太郎は承太郎で、息子として母親であるホリィの容態について詳しく聞く必要があるという理由から、ジョセフにホテル待機を命じられていた。

今日は花京院とポルナレフが同室である。ついでだから俺の分も頼む、と渡されたポルナレフの物と一緒に、花京院が自分の荷物を二人の部屋に押し込んでロビーへ降りると、ホテル待機組の三人はすでにそこへ集合していた。広い吹き抜けのロビーには三人の他、数人の観光客とホテルの従業員の姿しか見当たらない。待たせてしまったか、と花京院は少し足を早めた。

「すいません、エレベーターが混んでて」
「おお、花京院・・・ポルナレフのやつはどこに行ったんじゃ?」

ホテルのロビーで軍資金と買い物のリストを渡す予定だったジョセフは、姿の見えないポルナレフを探してきょろきょろと辺りを見回している。一緒じゃあなかったのか、というジョセフに、花京院はちらりとホテルの玄関口を見やった。

「ポルナレフなら先に外で待っているそうです。お金とメモは僕が預かりますよ」
「そうかそうか。それじゃあお前さんたちには悪いが、行ってきてくれるかの。買ってきてもらう物は全部メモに書いてあるから、心配せんでいいぞ」
「はい。・・・結構多いですね」

渡された買い物のリストは普段より少し長めで、花京院はこの先あまり大きな街が無いと言っていた今朝のアヴドゥルの言葉を思い出す。頼まれたものを全部揃えるにはなかなか骨が折れそうだ。更にポルナレフが一緒となると、ぐずぐずしていてはあっという間に日が暮れてしまうだろう。メンバーの中でポルナレフの寄り道癖とはぐれ癖を知らない人間はいない。これは急いだ方が良さそうだ、と花京院が背を向けると、ジョセフは思い出したように花京院を呼び止めた。

「おお!そうじゃった、そうじゃった。金は少し多目に渡しておるから、夕食は二人で済ませてくれんか。ちと今回の話合いは長くなりそうでな」

こっちはこっちで終わり次第夕食をとるというジョセフに、花京院は頷いた。

「わかりました。ポルナレフにも伝えておきます」

今度こそ歩き出した花京院は足早にロビーを突っ切ると、ホテルの外で待っているだろうポルナレフのところへ向かった。玄関扉をくぐり、まだ眩しい太陽の光に目を細めながら花京院は見慣れた恋人の姿を探す。外で待っていると聞いただけで、花京院はポルナレフと具体的に待ち合わせ場所を決めていた訳ではない。それでも花京院にはすぐにその姿を見つけ出すことが出来る自信があった。以前本人にその話をしたら、ポルナレフは「それは愛のチカラだ」などと嘯いていたが、もちろんそんなファンタジーやメルヘンのような話ではない。ポルナレフの特徴的な頭やファッションはいつも良い目印になるのだ。
その目立つ外見のおかげで、今回も花京院はすぐにポルナレフを見つけることができた。ホテルを出てすぐのところにある下り階段へ腰掛ける姿は、後ろからでもポルナレフだと容易に判断できる。少し脅かしてやろうか、などと考えながら、花京院は気配を消して後ろからゆっくりとポルナレフへ近づいた。・・・が、あと数メートル、というところまで近寄って、花京院はその場に立ち止まった。ポルナレフの隣に黒い物がもぞもぞと動いている。ポルナレフはしきりにそちらの方へ手を伸ばして、掻き回すようにそれを撫でていた。

「・・・猫?」

良く見ると、その黒い物の正体は黒猫のようだった。大柄な黒猫は階段の陽だまりの中へ堂々と寝転んで、ポルナレフに腹を見せている。やけに無防備なその姿と艶のある毛並は、花京院の知る野良猫のそれとは随分かけ離れていた。それでも猫は総じて気配に敏いものであるらしい。花京院が足を踏み出すと、ポルナレフより早くそれに気づいた猫が素早く起き上がってこちらを見た。ポルナレフも猫の視線を追いかけるように振り返る。

「花京院か」
「ジョースターさんからメモとお金預かってきたよ」
「おー、サンキューな」

ポルナレフは素直に礼を言って、足元の黒猫から手を離す。花京院が猫を見下ろすと、ポルナレフは人好きのする笑顔を花京院ではなく猫の方に向けた。

「こいつ人懐っこいんだ。食い物も持ってねーのに寄って来たんだぜ」
「ふうん」

花京院が近寄っても、猫は逃げようともせず階段に座って前足の毛繕いを始める。しかし屈みこんだ花京院が手を伸ばし、ざりざりと赤い舌を出して足を舐めている猫の背中に触れようとすると、猫は途端に顔を挙げた。真っ黒の身体にぽかりと浮かんだ丸い緑の眼が輝いて、花京院を威嚇するように睨んでいる。

「っ・・・」

思わず花京院が手を引くと、猫はふいと顔を反らしてポルナレフの方を見た。ポルナレフはその様子に軽く噴き出してから、猫の顎下を指先で掻くように撫でる。猫はゴロゴロと喉を鳴らしてポルナレフの腕に身体を擦り寄せた。

「花京院、お前嫌われてるんじゃあねえか?」
「・・・みたいだね」

花京院はその黒猫に何か引っかかるものを感じながら、屈めていた背を伸ばす。その時、ポルナレフの後ろからニイと猫の鳴き声がして、今まで座ったまま大人しく撫でられていた黒猫が立ち上がった。

「ん、仲間か?」

現れたのは赤毛の猫だった。ゆったりとした動きでこちらに近づいてくる。それを見た黒猫はポルナレフの手からするりと逃れると、滑るように階段を駆け下りて姿を消した。

「あー・・・行っちまった」
「仲が悪いのかな。猫は縄張り争いとかもするみたいだし」
「おいおい、お前ら仲良くしろよー?」

ポルナレフは触れるほど近くまで寄って来た猫に手を伸ばす。花京院は溜息を吐くと、先に階段を下りながらポルナレフへ声を掛けた。

「ポルナレフ、もうそろそろ行かないと。日が暮れる前に買わないといけない物が沢山あるんだ。店が閉まったら困、」
「いってェ!!」

突然響いた間抜けな声に振り返るより早く、花京院の足元を赤茶色のものが駆け抜けていった。一瞬それを目で追ってから後ろへ視線を投げれば、右手の甲を擦りながら立ち上がるポルナレフと目がかち合う。花京院が呆れたような顔をしてみせると、ポルナレフの眉間にも皺が寄った。

「なんだよ」
「引っ掻かれたのかい?」
「そーだよ。おー、痛ェ」

何も引っ掻かなくったって、とぼやくポルナレフの手にはくっきり赤い線が三本並んでいて、そのうち二本からは血が滲み出ていた。

「血が出てるじゃないか。消毒しないと」
「舐めときゃ治るだろ。こんなの怪我の内にも入らねえよ」
「ばい菌が入ったら大変だろう?ちょうどジョースターさんから貰ったリストに消毒薬と包帯があったし、買ったら手当した方がいい」
「包帯ィー?んな大げさな!」
「・・・後で膿んでも知らないぞ」

花京院が少し低い声で警告すると、ポルナレフは肩をすくめてがりがりと頭を掻いた。

「へーへー、分かりましたよ!でも片手じゃあやりにくいんだよなあ。面倒くせえ・・・」
「僕がやればいいだろう。さ、早く必要なものを揃えないと本当に日が暮れるぞ」

さっさと階段を下りると、花京院はこれ以上寄り道をさせないようポルナレフの腕を掴んで歩き出した。引っぱるなよ!と文句を言うポルナレフに、花京院は振り向きもせず返事をする。

「時間がないんだ。寄り道してる暇はない」

君、自分が前科持ちだってまさか忘れたわけじゃないだろうな?
ようやく追いついて隣に並んだポルナレフを花京院がじろりと見上げると、ポルナレフはぐっと言葉に詰まったような顔で花京院を見返した。

その後、結局花京院は市場に着いてからも、しばらくの間引きずるようにポルナレフの腕を引いて歩かされるはめになった。珍しい物や興味を引くような物がある度に、ポルナレフが用事も忘れてすぐそちらの方へ惹かれて行ってしまうからだ。ポルナレフも自分でその悪い癖が分かっているらしく、ぶつぶつ文句は言うが、花京院の腕を振りほどくことはしない。市場は大きな街だけあって粗方の物が揃っていた。広い市場を手探りで彷徨うことになったものの、小一時間もすればちょっとした嗜好品や保存食、毛布などの類を手に入れることができたのは幸いだ。おかげでリストの半分以上はもう片付けることができた。

「ポルナレフ、少し休憩するかい?」

ポルナレフは途中から花京院に荷物持ちをさせられて両手いっぱいに買ったものを抱えることになり、もう動くのも億劫そうである。こうなってしまえば勝手に何処かに行ってしまう心配もないので、花京院もポルナレフに対する監視の目を緩めていた。おう、と返事をしながら大きく欠伸をするポルナレフを見て、そういえば今日もポルナレフは朝から車の運転をしていたのだと花京院は思い出す。ポルナレフはそれなりに体力がある方だが、疲れているのかもしれない。

「急ぐとは言ったけど、疲れた時は教えてくれよ。僕だってちゃんと休みは取るからさ」
「分かってるって。お前相手に俺が遠慮すると思ってんのか?」
「まさか。取りあえず、どこかに座って荷物の整理と買い残しがないかリストのチェックをしよう。休憩も取れるし」

お前ってホント可愛くねえのな、と顔を顰めるポルナレフを軽くいなして、花京院は市場の大通りを抜ける。数分後、花京院とポルナレフは市場の外れにある休憩所へ腰を下ろしていた。休憩所といっても、小さな低いテーブルと丸太を輪切りにしたような椅子が幾つか置いてあるような、至極簡素なものだ。買い物に来た客の為か、市場の周りにはこのようなテーブルと椅子のセットがぽつぽつと散らばっていた。

「そういえば、ジョースターさんから余ったお金で夕食を済ませるように言われてるんだ。財団の人達との話が遅くなるらしくて」
「ふーん。外で食って来いって?」
「そこは自由にして良いんじゃあないかな。何か買って帰ってホテルで食べるのも良いし・・・それとも店に入るかい?」

花京院の提案に、ポルナレフはテーブルへ突っ伏した身体を起こして、何やら思案するように頬杖をつく。

「店の料理か・・・そういや俺達、最近まともなもん食ってなかったよなあ。缶詰とか干し肉とかばっかでよー」
「だから街に寄った時は野菜食べろって、アヴドゥルさんがいつも言ってるじゃあないか」
「俺は野菜じゃなくて、干してない肉が食いたいんだよ!」
「まあ・・・それは僕も分かるけどさ」

噛みつくようなポルナレフの熱弁に、花京院は呆れながらも同意した。野宿が続くような時は、食事のほとんどを保存食に頼ることになる。これはもちろん仕方のないことだが、この過酷な旅の中で、食事というのは数少ない楽しみの中でもなかなか大きなウェイトを占めるものだ。街に着いたとき位ちゃんとした食事をとりたいという願いは、そう贅沢なものでもないだろう。

「で、どんぐらい余りそうなんだよ」
「え?」

何が?と花京院は一瞬ポルナレフの顔を見て首を傾げたが、すぐに何のことか思い当たって財布の中身を確認する。

「ああ、お金かい?うーん・・・それが結構余りそうなんだ。大体の物はここで揃ったから、もうそんなに買う物もないし」

店に寄るとしたら、下着やタオルなどを買うための衣料店や薬局ぐらいだろうか。ホテルから市場へは一本道だったが、どちらの店も見かけなかった。もう少しホテルとは反対側に進んで探す必要があるだろう。といっても、この辺りが店の密集しているエリアらしいので、そう離れていないところにあるはずだが。花京院はちらりと左腕の時計を見た。

「まだ四時半過ぎだ・・・ちょっと早いな。どうする?」
「先に買い物済ませちまおうぜ。あー、でもなんか飯のこと考えてたら腹減ってきたな。外出たついでだし、今日はどっか店に・・・つってもこの荷物じゃあ無理か」
「そういえば、荷物のことを考えてなかったな」
「一旦ホテルに帰ってからまた出る、ってのも面倒くせえよなあ。しょーがねぇ、買って帰るか」

干してない肉の入ってる料理な、と勝手に言って、ポルナレフは何が面白いのか声を上げて笑った。ポルナレフは整理したばかりの荷物を乱雑に足元へ積み上げたまま、酷使して疲れた腕をぶらぶらと振っている。右手にはまだ三本の傷跡がみみず腫れのように浮き出ていて、ポルナレフの白い肌にくっきりと赤い線を描いていた。流石に出血はもう止まっているようだが、赤茶色の乾いた血が線の上にこびり付いている。花京院はその傷をぼんやりと眺めながら、ポルナレフの楽しげな笑い声につられて少しだけ顔を緩ませた。

衣料店と薬局を早々に見つけてリストの物を買い揃えた後、花京院とポルナレフはホテルへ帰る道の途中にあった店で夕飯を買った。二人とも両手一杯に荷物を抱えていたが、なんとか日没までに買い物を済ませることができただけ良いだろう。もうこの時間から店仕舞いを始めている店もぽつぽつあるところを見ると、やはり急いで正解だった。

「お前さあ、こういう時こそ薬局でアレ買えば良いのに」
「アレ?」

もうすぐホテルに着くというところでポルナレフが唐突に話掛けてきたので、何か用でもあるのかと花京院は無意識に早くなっていた歩調を緩める。

「アレだよ、アレ。あの日承太郎と一緒にいたとき、買いに行ってただろ」
「アレって・・・ああ、ゴム?」
「お前なあーっ、ここ道端だぜ!」

恥じらいってもんがねえよ、というポルナレフの脇腹を一つ肘で小突いてから、花京院はまた足を早めた。

「前に結構買い溜めしたから、まだ大丈夫だよ」
「あ、そう・・・」

脇腹を擦りながらポルナレフも花京院を追うように大股でついてくる。
花京院には少し前―――厳密に言えばポルナレフと承太郎を二人きりにした、ポルナレフの言う『あの日』から考えていたことがある。承太郎とポルナレフの関係のことだ。ポルナレフを疑うつもりはないものの、花京院は承太郎がポルナレフにただならぬ想いを寄せているのではという疑念を以前から薄々と抱いていた。花京院が俯くと、視界の端で交互に出されるポルナレフのつま先が見える。

「あのさ、ポルナレフ。言っておくけど」
「なんだよ」
「僕は君が誰と何をしてようが気にしない、なんて言うような男じゃあないよ」
「はあ?何言ってんだよ急に」
「僕は君を誰かと共有するなんてごめんだ」

君からしたらちょっと潔癖すぎると思うかもしれないけど、と花京院は付け加えた。

「でも大抵の場合、人間の本音はこんなものだと思うんだ。もし君が既に誰かと関係を持っていると知っているのに、割り切った関係でいいからと迫ってくる人間がいても・・・それはきっと本心じゃあない」
「どういうことだよ」
「相手が本当に自分は二番手で良い、なんて心から思ってるはずがないってことさ」
「じゃなくて!何でいきなりそんな話、」

ポルナレフは目に見えて動揺しているように見えた。花京院には思い当たる節がある。ポルナレフと承太郎を二人きりにした日、車に戻ってきたポルナレフの様子はどこかいつもと違って見えた。どこが、と聞かれるとはっきり答えることは出来ないが、とにかく妙な雰囲気だったのだ。―――承太郎と何かあったのではないか?それが少しずつ、花京院の中で確信めいたものになりつつある。だが証拠がない以上、花京院にはどうすることも出来なかった。

「・・・なんでもない。変なことを言って悪かったね。ホテルに帰ったら、食事の前に右手の手当をしてあげるよ」

花京院はもう一度荷物を抱えなおすと、ポルナレフの顔を見ることなく階段を上ってホテルの玄関扉をくぐった。

「ポルナレフ」

部屋に戻った花京院はまず先ほど買った荷物の中から消毒薬を取り出し、ベッドに腰掛けてポルナレフを手招きした。大人しく隣に座ったポルナレフの右手を掴んで手の甲を見ると、傷口にはじくじくとまだ乾いていない血が滲んでいる。

「また血が出てる」
「ん、かさぶたが剥がれちまったみてえだな」
「皮膚が抉れてるじゃあないか。消毒するから、ちょっと滲みるけど我慢しろよ」
「そんぐらい平気に決まってんだろ!ガキじゃああるまいし」
「そう・・・じゃあ触るよ」

威勢よく返事をしたポルナレフに、花京院は内心それはどうかなと首を捻る。案の定、消毒薬を染ませたガーゼを傷口に当てるとポルナレフは痛みに声を上げた。

「いっ、てェ!」
「手を動かさないでくれよ。君さっき平気だって言ってたじゃあないか」
「痛ェもんはしょうがねえだろ!」

お前わざとやってんじゃあねーのか、と騒ぐポルナレフの傷口へ、花京院は本当にガーゼをぐりぐりと押し付ける。瞬間、ポルナレフの叫び声は先ほどよりひどいものになった。

「いででででで!!」
「はい、消毒は終わったよ。あとは包帯・・・じゃなくて絆創膏で良いかな?」
「痛くなけりゃなんでもいいから、早く終わらせてくれ・・・」

ポルナレフは花京院に腕を預けたまま、げんなりした顔で天井を見上げている。お前どういう性格してんだよ、という呟きは聞かなかったことにして、花京院は包帯を取り出した。

「そうかい?じゃあどうせシャワーを浴びたら取れそうだし、やっぱり包帯にしておくよ」

手の甲を覆うように包帯を巻いて、花京院はもういいよとポルナレフの腕を解放した。

「サンキューな、花京院」
「どういたしまして。包帯は寝る前にまた巻き直そう」
「おう、頼むぜ。はあーっ、腹減ったな」

ポルナレフはもう買った夕飯の包みを破いている。花京院も手当てに使った物を片付けると、ポルナレフから自分の夕飯を受け取った。飲み物取ってくれ、と言うポルナレフに、花京院は荷物からコーラの瓶を探して手渡す。―――そこで唐突に部屋のチャイムが鳴った。

「・・・ジョースターさんかな?」
「さあ?・・・ちょっと俺が出てくる」

食事にしようかというところで現れた来客に、間が悪いなとぼやきつつもポルナレフがドアの方へ向かう。覗き穴から相手を確認したポルナレフは、首を傾げながらドアを開けた。

「承太郎?」

ドアの向こうから現れたのは承太郎だった。花京院も立ち上がってドアの方へ向かう。

「やあ、承太郎。財団の人との話はもう終わったのかい?」
「俺の方はな。アヴドゥルとじじいはまだ話し中だ。じじいに買って来た物を部屋に運んどくように頼まれてな」
「あー、なるほどな。それが結構な量になっちまってよー、お前一人じゃあちょっと厳しいぜ」

ポルナレフは部屋の奥に積み上げられた荷物を指さす。承太郎はその量を見て、少しばかり眉を顰めた。

「今から飯食おうとしてたんだけどよ・・・荷物運ぶってんなら先に手伝おうか?」
「ああ、頼むぜ」

気の好いポルナレフはすぐに協力を申し出て、荷物を取ってくるために部屋の奥へ引き返した。ポルナレフは一抱えの荷物を入口まで持ってくると、一旦承太郎へそれを受け渡す。そこからまた自分の運ぶ荷物を取りに戻ったポルナレフに、花京院は声を掛けた。

「僕も手伝おうか?」
「あー、二人で大丈夫だろ。今ちょっと纏めたから、残りも全部一人で・・・なあ、承太郎!お前ももうちょっと持てるだろ?」
「ああ」

部屋の奥から声を張るポルナレフに、承太郎が入口から返事をする。ポルナレフはじゃあやっぱ二人で良いな、と独り言のように呟いて立ち上がった。先ほどより嵩の減った荷物を両腕にぶら下げて、ポルナレフは二人のいるドアの方へ向かってくる。荷物の一部を承太郎に渡すと、ポルナレフは花京院を振り返った。

「花京院は先に飯食ってて良いぜ。俺も荷物置いたら、すぐ戻るからさ」
「そう・・・悪いね」

一応頷いたものの、ポルナレフが部屋を出て行ってからも、花京院は食事に手を付けなかった。自分だけ先に食事をするというのも少々抵抗があったし、すぐに戻るというポルナレフの言葉を信じていたというのもある。しかし、部屋を出て三十分が過ぎてもポルナレフが部屋へ帰って来ることはなかった。
結局ポルナレフは優に一時間が経過しようかという時になってようやく戻って来た。部屋へ入るなり、ポルナレフは手の付けられていない二人分の夕飯に声を上げる。

「先に食っとけって言っただろ!」
「仕事を任せておいて、自分だけ先に食べるなんて出来ないだろ。それに君がすぐ戻るって言ったからさ」

それとも元々すぐには帰って来ない予定だったのかい?
花京院は言いかけた言葉をようやくありつけた食事と一緒に飲み込んだ。ここへ来て、花京院の疑いはますます真実味を帯びてきた。ポルナレフを誰かと共有するなんてごめんだ。その気持ちは変わっていない。しかし、どちらにしろ今日ポルナレフと一緒に過ごすことが出来るのは自分なのだ。それに承太郎がポルナレフへ関係を迫っているとして、ポルナレフを問い詰めたところで、自分から承太郎を受け入れたのかどうかというところまでは分からないだろう。ポルナレフが承太郎を庇うことも考えられるし、そもそも恋人である自分に真実をありのまま告げるとは考えにくい。戻って来たポルナレフの様子は今日もどこか普段と違うような気がしたが、花京院は胸に引っ掛かるような物を感じながらも、あえてそれを追及しなかった。ただ、いざとなればどこかで承太郎に釘をさす必要があるかもしれないな、と花京院は秘かに心を決める。食事の間も花京院は心中穏やかではなかったが、それをポルナレフに悟られないよう、いつも通り過ごすことに努めた。

食事の後、二人はいつも通りシャワーを浴びると同じベッドに潜り込む。流石にくじ引きで別室になったときや一人部屋になったときにはお互い別々に夜を過ごしていたものの、アヴドゥルに説教を受けた後も、ポルナレフと花京院は二人部屋で同室になる度行為を繰り返していた。相部屋になれば、花京院とポルナレフは次がいつになるか分からないから、と一度では終わらず何度も身体を重ねるのが常である。しかしポルナレフが今日は大分疲れているようだったので、花京院はそれも二回で切り上げた。

「ポルナレフ、まだ寝るなよ。包帯を巻くって言っただろう」
「あー・・・忘れてた・・・」

だらしなくベッドに身体を沈ませたまま、ポルナレフが花京院へ右腕を差し出す。まだうっすらと汗を掻いた肌が、ベッドサイドの電灯でやけに艶をもって見えた。後処理を済ませると、いつも二人はシーツが汚れたベッドから綺麗なベッドの方へ移動して一緒に眠る。新しいシーツに包まったポルナレフは、もう半分まどろんでいる様子だ。花京院はしょうがない奴だなと文句を言いながらも、手早く右腕に包帯を巻いて、ポルナレフの汗で湿った髪を撫でつけてやった。ポルナレフは擽ったそうに身動きすると、花京院にいつもより大分気の抜けた笑顔を向ける。

「ふぁ、おやすみ・・・」
「おやすみ、ポルナレフ」

花京院は電灯を完全に消すと、ポルナレフの隣に潜り込んだ。仰向けに寝ると、シーツに触れて一瞬ぴりりとした痛みが背中に走る。正面から抱いたとき、またポルナレフに爪を立てられたのだろう。明日起きたら爪を切るように言わないと、と思ったのを最後に、花京院も睡魔に引き寄せられるように瞼を閉じた。

翌朝、花京院はポルナレフより先に目を覚ました。シャワーを浴びて身支度を粗方整えると、ポルナレフを起こすために再びベッドへ戻る。

「もう朝だよ、ポルナレフ」

布団を剥ぎ取ると、ポルナレフは眩しそうに薄目を開けて花京院を見上げた。

「ふあ・・・朝ァ?」
「あと三十分で仕度しないと間に合わないぞ。食堂に集合しろって昨日言われただろう」

時間を聞いたポルナレフは再び閉じかけていた瞼をなんとか開き、眠たそうに目元を何度も擦った。身体を起こした後もしばらくぼんやりしているので、花京院がもう一度急かすと観念したようにベッドの上で伸びをしている。大きな欠伸をしたところでようやく頭が働き出して、自分が何も身に着けていないことを思い出したのか、ポルナレフは居心地悪そうにもぞもぞと身体を隠した。

「・・・何してるんだい?」
「何って・・・あんま見んなよ」
「君って変なところで初心だよね。昨日散々見られたのに、そういうのは恥ずかしがるなんてさ」

これは花京院の本心である。ポルナレフは身体を重ねる時以外で自分の裸を見られるのをやけに恥ずかしがるのだが、花京院にはそれが不思議でならなかった。一種の偏見であるかもしれないが、花京院は外人というものは総じて大胆であると思っていたし、特に普段から露出が多い服を好んで着ているポルナレフのような人種が仲間に、それも恋人に裸を見せることを恥ずかしがるはずがないと考えていたのだ。

「僕は君なんていかにも裸でその辺をうろつきそうだと思っていたから、ちょっと驚いたよ」
「うるせーよ!お前の方こそ、『日本人』ってホントかよ?聞いてたのと全然違うぜ」

ほとんど詐欺だと唸るポルナレフは、シーツを身体に巻きつけたまま着替えを掴んで風呂場へ消えた。それから十五分もしない内にポルナレフが風呂から上がり、身支度を整えたところで丁度朝食の時間になる。花京院とポルナレフが食堂のある階まで降りると、そこにはアヴドゥルとジョセフが居た。

「おはようございます」
「おお、おはよう」

昨日は良く眠れたかの、というジョセフの言葉に頷いて、花京院は辺りを見回す。やはり承太郎の姿だけが見当たらなかった。

「・・・承太郎はまだ来ていないんですか?珍しいですね」

承太郎が寝坊をするというのはあまり想像できないし、そもそも昨日承太郎はジョセフやアヴドゥルと同室だったはずだ。花京院が首を傾げると、先ほどまでポルナレフと何やら話をしていたアヴドゥルがそれに答えた。

「承太郎は服を着替えに戻ったんだ」
「服を?どうして?」

ますます首を傾げる花京院に、ジョセフは苦笑いする。

「エレベーターを降りた所でこのホテルに泊まっていたレディにぶつかって、コーヒーをひっかけられたんじゃよ。お前さんたちが来る少し前にな」
「なるほど」

花京院が頷くと、脇で聞いていたポルナレフが面白そうに口を挟んだ。

「朝っぱらからツイてねえなー!承太郎の奴もよ」
「そういうお前も気を付けた方が良いぞ。昨夜の星の動きで、何やら揉め事に巻き込まれる予兆が見えた」
「揉め事ォ?おいおい、勘弁してくれよ!」
「私に言われても困る。文句があるなら、自分の星に言うことだな」
「・・・なんだよ揉め事って」
「さあな。思い当たる節はないのか?・・・ああ、それともありすぎて分からないのか?」
「おいッ、俺をなんだと思ってんだ!」

アヴドゥルと占いのことで盛り上がり始めたポルナレフを放って、手持ちぶさたになった花京院は何気なく辺りを見回す。エレベーターの方を見ると、丁度到着したエレベーターから降りてきた人たちが次々と吐き出されている所だった。その中に一際目立つ、そびえるように背の高い男がいる。どれだけ人が多くても、承太郎を見つけるのは容易いことだ。余程急いでいたのか、今日の承太郎はトレードマークともいえる学ランを着ることなく腕に引っ掛たままである。大股でこちらへ近づいて来る承太郎に花京院が朝の挨拶をすると、承太郎はそれに片手を上げて答えた。

「おっ、来た来た」
「・・・悪い、待たせた」
「良いって、良いって!それより腹減ったし、早く飯食おうぜ!」

ジョセフとアヴドゥルはポルナレフに急き立てられて、先に食堂へ入ってしまう。お前らも早く来いよ、と振り返ったポルナレフに苦笑いすると、花京院も先に歩き出した承太郎の後ろを追う。そこで目の前にある承太郎の背中を見て、花京院は自分の眼を疑った。承太郎の左右の背中の上方に、引っ掻いたような赤色の傷が数本ずつ浮かび上がっている。シャツに隠れて目立たないが、まだ新しい傷の表面には乾きかけの血がこびりついていた。これはつまり―――そういうことか。この傷がどうやってできたものか、花京院には聞かずとも分かる。自分の背中にも同じ物があるのだ。花京院は内心歯噛みした。一足遅かった、と舌打ちするのを抑えて、花京院は何食わぬ顔で承太郎の背後へするりと近寄る。

「承太郎、その傷どうしたんだい?」
「傷?」
「背中にある傷さ」
「ああ、」

ニヤリと笑った承太郎の緑がかった目は妙に光を帯びて、今まで見たこともない色で輝いてる。

「昨日猫に引っ掻かれちまってな」

花京院はその色に見覚えがあった。思い出すまでもない。昨日階段にいた黒猫だ。ポルナレフに擦り寄る、真っ黒い身体に浮かんだ緑の眼。

「・・・そう。珍しいね、君が猫に引っ掻かれるなんて」

猫がそんなところに傷など付けるものか。花京院は言葉を飲み込んで、出来るだけ愛想の良い笑みを浮かべた。

「後で僕が手当してあげるよ。跡が残るといけない」

―――傷跡一つくれてやる気はない。
言外に匂わせた意味に、聡い承太郎は気付いただろうか。花京院は承太郎の顔を覗き込んだが、その表情からは何も読み取ることはできない。承太郎の緑に光る眼だけが、花京院をじっと見返していた。


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テーマ:ジョジョの奇妙な冒険
ジャンル:アニメ・コミック

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YES I AM!

海野ヒレ

Author:海野ヒレ
生き物大好き:海野ヒレ

pixiv: http://pixiv.me/umino-hire

twitter: https://twitter.com/umino_hire

身分:腐海の底で汚泥を啜る大学生。これでも医学生よ!

誕生日:8/4 吉田松陰先生と一緒(旧暦)

血液型:AB型

好きなゲーム:一生不動の一位はサガフロンティア2。異論は認める。

好きな漫画:ほんと色々。オリジナルBL、擬人化、アンソロも読みますモグモグおいしいおかわり!百合も逝ける。でも大まかに言うとギャグは大体好きみたいよ。

属性:自然発生型腐女子。小説メイン、イラスト少々にて活動中。拍手、コメントを貰うと喜びにくるいもだえるのだ。

特技:マイナーなジャンル・キャラ・CPばかりに熱烈な愛を送る。時々切ない。

好きなものごっちゃで詳しく:銀魂、サガフロ2、ダンガンロンパ、ギャグマンガ日和、+チック姉さん、ジョジョの奇妙な冒険(3部)、クロノクロス、ジルオール、ドリフターズ、モノノ怪、さらいや五葉、魔法少女まどか☆マギカ、モンハン、討鬼伝、アサシンクリード、フロンティアゲート、牧場物語、聖剣伝説LoM、FFXなど

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